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学会についてABOUT US

設立趣意書

「背景」
我が国の骨格筋の基礎研究には、1960-70年代に筋小胞体とトロポニン複合体による筋収縮のメカニズムを解明した故江橋節郎博士の研究を頂点として、現在にいたるまで輝かしい歴史と伝統がある。往時には、解剖学会、生理学会、生化学会を始めとし、各学会で骨格筋のセッションは、興隆を極めていた。しかしながら、骨格筋収縮制御の研究が多くの問題を残しながらも一応の決着を見せ、一部の骨格筋研究者の関心が骨格筋から、平滑筋、心筋に移行したことを契機とし、様々な領域に拡がっていったことも事実である。また1970年代には、筋細胞は、培養可能な細胞の代表であり、それゆえ、細胞生物学においても中心的な役割を果たしていたが、神経細胞を始め他細胞の培養が一般化し、学問が深化するにつれて、筋細胞が特殊に分化した形質を有することもあって、細胞生物学への関与が相対的に低下したことは否めない。更に、1987年には、筋肉研究の分野には、他分野にも大きな影響を与える二つの大きな革命的な発見があった。即ち、分子生物学分野における、MyoDを始めとするMuscle regulatory factorsの発見がその一つである。この発見は、筋分化の機構解明の研究が高次機能研究の代表として常に注目を浴びるきっかけとなった。その後、筋細胞の上流としてのStem cellの構造と機能が注目され現在に至っている。もう一つはDuchenne型筋ジストロフィーの原因分子としてジストロフィンの発見である。この発見以来、四半世紀に渡って、筋疾患研究が骨格筋研究の中心であったと言っても、それほど大きな間違いではないだろう。ジストロフィンの局在の同定、ジストロフィン結合糖タンパク質の解明を始めとし、我が国の研究者も、この分野の研究に大きく貢献してきた。しかもこれらの研究は、神経難病を始め、多くの遺伝性疾患に大きな影響を与えてきたのである。
 このように骨格筋研究は、長い生物学の歴史の中で新しい局面を開いてきた他、電気生理学、解糖系など代謝病学、Caイオンを含む生物物理学等、多くの周辺の科学に少なからぬ影響を与えてきた。ただ、それらの分野の発展に基盤を与え、その発展を促すと言う重要な役割を担ってきた一方で、自由闊達な骨格筋研究者の性状を反映し、その興味が移り行くのに、何時も何かしらの援助を受けることができたこととも関連し、骨格筋生物学に関する学術団体およびそれが運営する研究集会の設立をみなかったことも、事実として指摘せざるを得ない。大変興味深いことに、その傾向は、欧米でも我が国でも、全く事情を一にしている。
 ところが、近年、骨格筋生物学を取り囲む状況は一変している。超高齢社会を迎えたわが国では、加齢性の筋萎縮(サルコペニア)、慢性疾患・癌悪液質による筋力低下(カケキシア)、寝たきりや骨折に伴う筋活動の低下による筋萎縮の克服が、健康寿命延伸のための社会的に重要な課題となった。加齢や癌・糖尿病等の慢性・代謝性疾患に伴う筋萎縮は、運動機能低下のみならず、領域横断的な病態として、筋生物学者が取り組むべき重要な問題である。更に、運動が健康の維持、疾病の予防のために必要であることは国民の多くが認識しているが、その背景について、十分明らかであるとは言い難く、疾患の経過、治療による回復過程での運動負荷の基準となる分子マーカの確立をみていない。これまで研究の中心であった筋疾患研究についても、次世代型シークエンサを用いた原因遺伝子の探索は第一の課題であるが、病態の解明を出発点にした治療開発研究が、将来の中心となるであろう。これらの研究には、現代の生物学の総力を挙げて取り組むことの必要性が指摘されている。もはやかつての基礎科学と医学研究の間の壁はないと言えるだろう。逆に、国民からの期待に応えて、こうした多くの課題を克服するためには、基盤となる骨格筋生物学が重要であることは言うまでもない。そのためには、一人でも多くの学生、院生に、本研究領域に加わってもらい、若い世代の研究者を育成して、生物学の重要命題に取り組むことを督励し、成果を挙げることが必須である。一方、今後の治療開発研究の欠くべからざる担い手である企業の研究者からも学会設立への強い要請がある。それ故に、わが国における骨格筋生物学研究に関する統一的な組織を構築し、次世代の研究者を積極的に支援する場を設立することが、今後の骨格筋研究領域の発展のために必要不可欠かつ喫緊の課題である。

「新学会設立に向けた経緯」
これまで、骨格筋生物学の領域では、厚生省によって設立され、その後厚労省によって発展し、近年は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)によって運営されてきた筋ジストロフィー研究班が、班会議を開催することによって、研究交流を促進してきたことを否定することはできないであろう。しかし、今般の「日本医療研究開発機構」の発足によって、研究班の財政的な基盤を与えてきた厚労省から独立行政法人としてのNCNPに交付されてきた運営開発費は、主としてin house研究に充当されるとの方針が出ており、今後の長期的な展望に立つと、筋ジストロフィー班が、研究交流の場を提供し続けることは難しくなってきている。従って、骨格筋生物学研究に関する統一的な組織を構築し、研究集会を開催することは急を要する課題である。時を同じくして、米国では、Society for Muscle Biology が設立され、研究集会が開催され始めている。将来的には、彼らと協調して活動を進めることも可能であると考える。

「新学会の意義と役割」
日本筋学会は、学問の対象として筋細胞のダイナミズムに着目するが、その一端を成す筋疾患のみならず、加齢等に伴う筋萎縮や、癌・慢性疾患・免疫性・代謝性疾患等に伴う筋障害、食肉等畜産学に伴う課題にも着目する。方法論としては、分子生物学、分子遺伝学、細胞生物学的研究のみならず、発生学、再生医学、内分泌代謝学、免疫学など、多くの学問分野に渡る高いレベルの知識と経験を基に、骨格筋を主点とした生体システムの解明を目指す。従って、理学・工学・農学・薬学・体育学・医学分野の研究者を始めとし、これらの研究に密接に関わる臨床家と、製薬企業を含む広範な分野から骨格筋生物学に携わる研究者の交流と異分野間の研究の融合を促進することを目的とする。骨格筋研究に関する新学問領域の創出および将来的な医薬品並びに医療機器の開発を加速することで、日本国民の健康を骨格筋という視点から支えることを最終目標に掲げたい。
 日本筋学会を立ち上げ、そのホームページを開設することにより、学会への参加者を募るが、早期に研究集会を開催し、参加する各個人が対等な立場で活発な議論を行うことを活動の第一とする。研究領域の研究活動を支援し、基礎研究を促進するために、関連分野の実験手引書と領域の教科書の執筆と出版を推進する。国際的な交流を視野において共同研究を推進する他、若手研究者を育成し、その成長を図るためにも、この研究領域に応じた文科省の科研費分野の創設を具体的な目標として掲げる。
 おりしも2014年9月、日本学術会議の臨床医学委員会は、「超高齢社会における運動器の健康?健康寿命延長に向けてー」と題する提言を行っている。運動期疾患対策に沿って、研究事業の推進、人材育成の支援がうたわれているが、中心となる不動性の筋萎縮の克服のためには、基礎的な学問としての骨格筋生物学がもう一度興隆することこそが必要であり、社会的意義も高く、循環器・呼吸器病学、整形外科学など周辺の医学を含め、大きな波及効果が期待されることを強調したい。そのためには、日本筋学会の設立こそが、必要にして欠くべからざる課題である。

                     平成27年2月吉日 日本筋学会(JMS) 理事長 武田伸一


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