Newsletter no.3(Mar,1995)

学会の新しい発展を祈って
会長就任のご挨拶
1994年度プロジェクト委員会報告
1994年度評価研究委員会活動報告
選挙管理委員会報告
1994年度の国際的活動報告
日本動物実験代替法学会第8 回大会を終わって         
日本動物実験代替法学会第9 回大会のご案内
大野忠夫会員がAFAAR 賞を受賞!
8回国際InVitroToxico1ogy ワークショップ(INVITOX94)に参加して
ECVAM会議出席報告
2ndWorld  Congress  on  Alternatives  and  Animal  Use  inthe  Life  Sciencesのご案内
ヨーロッパにおける動物試験禁止について
Harvest  Mouse  and  Technomouse モノクローナル抗体産生を in  vitro
 
 


 

学会の発展を祈って

                                前会長 菅原 努

 動物実験代替法の必要性とその欧米での進展を Scienceその他で知り、その話をたまたま岡本道雄科学技術会議議員(当時)にしたのがきっかけで、この問題に深入りして早や 10数年が経ちました。初めはその重要性、必要性を広く呼びかけ、いろいろの分野の研究者に参加をさそいかけることで精一杯でした。動物実験代替法とは何か、といったことについていろんな雑誌などに書きました。そのうちに validationなどという通常の学会では取り上げないようなことにまで手を拡げなければいけないことになりました。また学会として研究補助金を出すといったことも行ってきました。しかし、ここまで来ると一度すべてを見直して学会としての形をきっちりと整える必要があり、心機一転すべきであると反省しておりました。また先端的な科学技術の導入が必須であり、この面でも、とてもリードしていける立場にないことを痛感していました。幸い小野宏先生を新会長としてお迎えすることが出来、ほっと一安心しているところです。気持ちだけは若いつもりでいても、やはりいろんな面で年には勝てません。ぐっと若返った新会長のもとで学会が新たな発展をされることを心から祈って止みません。
 



 

会長就任のご挨拶

        財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 小 野   宏

 この度日本動物実験代替法学会会長に選出され、 199596 年度の学会長を勤めることになりました。本学会設立以来の会長であられた菅原努先生の後を受けて、重責ですが、精一杯勤めたいと思います。今、動物実験代替法の研究は、まだまだ新しい試験法を考案する必要がありますが、盛んな試験法開発の時期を経過して、試験法実用化への道をたどりつつあると見て取れます。試験法のヴァリデーションはわれわれ学会のますますの大きな課題になって行くでしょう。それは多大の労力と時間と経費を要する作業ですが、避けて通ることは出来ません。こうして、代替試験法の科学的な、公正な評価が次々に実現して来るでしょう .                 替法の研究には国際的な視点が必要です。幸いわれわれは、比較的早くから国外の研究活動者との連携を保って来ることが出来ました。しかし、外国に行って、日本の事情がよく知られていないことに驚くことがあります。われわれの活動を質的量的にもっと高めて、国際的にも貢献するようにしなければなりません。動物実験代替法の実現には国際的な認知が不可欠だと考えるからです。
 われわれの課題は大きく重いものでありますが、この達成のためには本学会をもっと大きくし、つまり会員を増やし、活性化しなければならないと感じます。会員の皆様の活躍に期待するとともに、その振興と調整のために微力を尽くしたいと思います。

 



 

1994年度プロジェクト委員会報告

本年度は210日と 1026 日の2回、東京で開催した。「研究助成基準について」の検討を行い、 329 日の評議員会で決定された研究助成選考基準に基づき、研究助成金交付申講の募集と審査を行った。本年度の申請は 16件あった。複数年度にまたがる助成を希望する応募については、複数年度にわたる助成は考慮しつつも決定せず、毎年の審査により、単年度ごとに助成金額を決めて行くこととし、選考の結果、以下の交付推薦を決定した。
 なお、当然ながら次回の本学会評議員選挙の結果によるものの、本プロジェクト委員会メンバーの約半数交代を会長に進言することとなった。本学会行事として重要な研究助成金審査にあたって、委員構成がいつまでも似たようであってはならず、また、一方で委員全員が交代したがために過去の経緯がわからなくなることを避け、かつ、本学会としてどのような研究を助成して行くのかという方針が頻繁に変わるのも好ましくないからである。 

 (平成6 年度研究助成金交付推薦者)

 1 )ハイブリッド型人工肝臓を利用した動物実験代替のための薬物代謝シミュレーターの開発
    船       守 九州大学工学部化学機械工学科            交付額1 000000

 2 )培養下ニューロン回路網形成系を用いた新しい中枢神経毒性試験法の開発
    黒 田 洋 一 郎   東京都神経科学総合研究所        交付額  1000000

 3 )眼粘膜刺激性試験代替法試験の評価基準となるDraize 評点の変動の解析と標準比較物質
    黒 川 雄 二   国立衛生試験所安金性生物試験研究センター   交付額  1000000

 4 ) ヒト末梢血リンパ球由来ナチュラルキラー細胞の機能を指標とした細胞毒性試験法の確立
    小 林   郎  東邦大学理学部分子免疫学             交付額1 000000

 5 )突然変異原性試験におけるS9mixの代替系としてのシトクロム P450化学モデル系による発がん物質の活性化
    望 月 正 隆   共立薬科大学薬学部有機薬科学    交付額   800000

 6 )発生毒性試験における動物実験代替法としての哺乳類全胚培養法の開発一無血清培養液の検討
    秋 田 正 治   鎌倉女子大学家政学部        交付額   800000

   7)薬物動態予測プログラムの開発とその応用
    深 野 駿 一   都立衛生研究所毒性部        交付額   500000

                 


 

1994年度評価委員会活動報告

          評価研究委員長小野 宏
                   委員 板垣 宏、大野忠夫、大野泰雄、田中 悟、田中憲穂
 19925月以降「細胞毒性試験法のバリデーション」の作業を行ってきた。この計画では小野 宏、板垣 宏、大野忠夫、田中憲穂の 4名が運営委員を勤める他、統計解析のため林 真、吉村 功両会員に加わっていただいた。眼刺激性試験の代替法のために、次の 5つの細胞毒性試験法について各2 種類の細胞を選び、共通試験物質(6種の界面活性剤)を用いて多施設共同研究を行った。 

 @LDHLacticdehydrogenase )法:HeLa SQ5
 ANRNeutra1red uptake法:HeLaNRCE
 BCVCrystalviolet)法: HeLaCHL
  C MTTMethylthiazole diphenyltetrazo1ium)法: HeLaSQ5
  Dコロニー形成試験: HeLaBALB3T3  

 総計44 機関が研究に参加し、各試験を12 20機関が実施した。19938月にデータ収集を終わったが、データ集計、解析のために時間を費やし、最終的な報告・反省会を 1130 日に東京神田学士会館で行った。現在、報告論文の作成にかかっている。

 この成績の中間的なまとめは 19949 月の”INVITOX” に発表した。
 
 


選挙管理委員会報告

先に実施いたしました選挙において、 19951996 年度の日本動物実験代替法学会の会長、副会長および評議員が下記のように決定しました(敬称略)。                    
会  長: 小野宏
副会長: 黒田行昭
新評議員: 板垣宏   大野忠夫   小野宏
      大野泰雄  帯刀益夫    鎌滝哲也
      黒田行昭 小島肇   小西喬郎
      小西宏明小林敏明    佐藤温重
      塩田浩平東海林隆次郎祖父尼俊雄
      高中正     田中悟      田中憲穂
      星宏良    難波正義   二宮博義
            前島一淑吉村功      渡辺正巳 
 



 

1994年度の国際活動報告

                                国際担当委員長田中憲穂

1.国際担当委員会では、 19949 月スイスで行われたINVITOX94の国際ワークショップに、大野忠夫(理研)と佐々木澄志(食薬安全セ)の 2名の会員に出席を要請し、その旅費の一部を助成しました。本ワークショップは 2年に1 回開催されており、ヨーロッパを中心として米国からも代替法の研究者が多数参加し、活発な研究発表が行われております。大野会員は、本学会の大きなプロジェクトである、各種細胞を用いる試験のバリデーションの結果を中間報告という形で発表され、細胞を用いる系の有用性について討議してきました。また、佐々木会員は参加報告にも記されていますように、欧米の代替法研究についての情報収拾を行い、 ECUK のバリデーションスタディの打ち含わせ会議に参加しました。 

2.ヨーロッバの代替法研究センターとして設立された ECVAMEuropean  Centre  for the  Va1idation  of Alternative  Methods、所長 DrMBa11s)の開所式が、欧米の代替法研究の推進者と動物保護団体のリーダー、 ECOECD 等の行政担当者などが出席して1994 1017 日に行われました。引き続いて翌18日には、開所記念シンポジウムが開催され、日本からは国際担当副委員長の加藤 忍会員が、代替法研究の取り組みと日本の状況について講演しました( ATLA22414416 1994)。 

3 OECD試験法ガイドラインに関する各国代表者会議が 1994104 5日にパリにて開催され、厚生省の要請により小野 宏会員が派遣されました。会議の要旨はファルマシア( Vo131P75 1995)に記載されておりますが、代替法については、下記のような試験項目を中心に討議がなされています。
 「急性毒性試験(No401)」のガイドラインに関しては、代替法として「国際用量法( No420 )」が採択されており、さらに第二の代替法として「急性毒性等級法」が討議され、現在最終案作成の段階だそうです。また今後、吸入毒性と経皮毒性についての「急性毒性等級法」も提案される予定とのことです。さらに、「人道的屠殺法のガイダンス」の原案も作成されています。 

4.遺伝毒性試験に関する OECDガイドラインの改訂作業については、 1994919 23日にイタリア(ローマ)で専門家会議が行われ、本学会国際担当委員の祖父尼俊雄会員と松島泰次郎会員が出席しましデ。現在、各国のコメントを検討中であり、近いうちに最終的な改訂案が提案される予定となっています。関連ガイドラインとしては、大腸菌とサルモネラの系をまとめて一本化される

「微生物を用いる復帰変異試験( No471472)」
in  vitro染色体異常試験( No473 )」
in  vivo小核試験( No474 )」
invivo 染色体異常試験(No 475)」
in  vitro培養細胞突然変異試験( No476 )」
「哺乳動物を用いる精原細胞染色体異常試験( No483 )」

などの改訂に加えて、新たなガイドラインとして

UDS 試験」

が加わります。 

その他のニュースとして
 スイス国内の研究所では、 1995年よりモノクローナル抗体の生産に動物を用いることはできなくなり、すべて細胞を用いる in vitro の系に代替するというニュースがあります。スイスでは1980 年度の初めには年間約10 000頭のマウスを用いていたのが、その後、徐々に減少しており、特殊な場合を除き培養系で代替できるとの見通しがついたとの Federal Veterinary  Officeの判断によるものです( ATLA22P411 、”News View”より)。 

1994年発行の米国薬局方 USP XXIII では、動物を使わない試験法の採用が進み、ウサギを使った発熱性物質試験法は250 品目についてエンドトキシン試験法に置き換えられ、抗生物質のすべてからマウスを用いた安全性試験が削除されました。眼科用製剤およびプラスチック製品の試験法では細胞毒性試験法が採用されています
(医薬品研究 26P281995より)。

 



 

日本動物実験代替法学会第8回大会を終わって  

            麻布大学環境保健学部生命科学講座 黒 田 行 昭
 199411 28日(月)、29 (火)の2日間、東京目黒のこまばエミナース(国民年金中央全館)で麻布大学学長 中村経紀博士を会長に日本動物実験代替法学会第 8回大会を開催いたしました。この大会の組織委員長として会場の設定や特別講演、シンポジウム、ワークショップなどの学術講演の企画や要旨集の印刷、大会運営など大会の企画、運営の任を無事に果たすことができましたことをご報告し、多数ご参加の会員皆様のご協力を厚くお礼申し上げます。
 幸い好天にも恵まれ、会場は東京駒場の東大に近く、渋谷から井の頭線で約 5分という好位置にあったせいか、初日から多数の参加者が詰めかけ、事前登録の会員、非会員を合めて参加者総数的 400名に達し、ベルリン(ドイツ)の国立動物実験代替法記録・評価センター( ZEBET)所長のHSp1elmann博士の特別講演や、 4つのテーマでのシンポジウム、1 つのワークショップなどの学術講演はいずれもレベルの高い研究発表と白熱した討議が行われ、講演内容を熱心にメモをとる姿も多く、実りある大会であったと存じます。今回のシンポジウムは、重金属の毒性を種々の異なった臓器を対象に、それぞれの培養細胞を用いて異なった視野から検定し、評価することや(シンポジウム I)、化粧品などの化学物質の皮膚刺激性だけではなく経皮吸収性の問題を取り上げたこと(シンポジウム II)、また、細胞培養とin  vivoの実験との接点として哺乳類全胚培養法の問題点(シンポジウム III)、さらに、これまで取り上げられなかった動物保護や動物倫理の面から動物福祉についての問題点(シンポジウム IV)などいずれも動物実験代替法のより広く、奥深い問題点について討議されました。また、ワークショップとして取り上げましたのは現在使用されている多くの培養細胞株は無限増殖性を示し、実験の再現性や定量性にはすぐれた材料ですが、その細胞の由来したもとの組織や器官の特性が失われているものが多いのが実情です。そこで生体組織の機能を保持した細胞株として、がん遺伝子を導入して不老化した肝臓、腎臓、胃、造血組織、血管などの細胞が紹介されました。 一般会員からの申込による一般演題は、 37題がこまばエミナースの孔雀、瑞鶴の間を会場にして 2日間にわたってポスター展示されました。それぞれの演題については奇数番号と偶数番号に分けて、それぞれ第 1日目と第2 日目の13時より 1時間、演者が内容を説明し、参加者との質疑応答を行いました。この一般演題につきましては、参加された学会評議員全員の投票により、すぐれた演題に対してゴールデンプレゼンテーション賞が贈呈されました。今回の第 8回大会の受賞者はつぎのとおりです。 

P113 D Histocultureによる有色化粧品の皮膚刺激性評価
   ○佐々木哲二、真鍋幸子、丹野知信(極東製薬工業褐、究開発)

P28 アフリカツメガエルを用いる 237 8tetrachlorodibenzop dioxinの発生毒性の検索
   -血球系細胞におけるアポトーシスについて -
   〇阪本典子、美馬信、谷村 孝(近畿大・医・一解)

P33 化粧品原料の神経細胞に対する影響  電気生理学的手法及び MTT法による評価
   ○井上かおり1 、中沢憲一2、井上知秀 2、藤森観之助2 、大野泰雄2、高仲 正 2、板垣 宏2
    加藤 忍1 、小林敏明1、黒岩幸雄 3                    
    (1 且草カ堂・安全性・分析センター、2国立衛試・薬理、 3昭和大・薬・臨床薬学) 

 懇親会は大会第 1日目の夜、こまばエミナースの鳳風の間を会場に、約 150名が出席して開催されました。ここでは参加者相互の親睦がはかられ、特別招待されたドイツの Spielmann博士を囲んで、終始なごやかな雰囲気の中で終了いたしました。

 次回の第9 回大会は1995 1129 日(水)、30日(木)の 2日間、塩田浩平(京大・医・解剖)会員のお世話で、京都北白川の京都会館で開催される予定ですので、多数の方々のご参加を期待いたします。

 


日本動物実験代替法学会第 9回大会のご案内

                      日本動物実験代替法学会会長小野 宏
                               同第9回大会会長塩田浩平

 日本動物実験代替法学会第 9回大会を平成711 2930 日の両日、京都市の京都会館で開催させていただきます。多数の会員の皆様方の御参加をえて、活発な御発表と御討論をいただき、実り多い学会にしたいと念じております。詳しいご案内は、次号ニュースレターでお知らせ申し上げます。また、会員の皆様には、演題募集要項を 4月にお送りする予定です。 
  9回大会では、動物実験代替法に関するすぐれた特別講演、重要なテーマについてのシンポジウムやワークショップを企画したいと考えております。会員の皆様方からの幅広い御提案をお待ち申し上げております。

  会期:平成 71129日(水)、 30日(木)
  会場:京都会館(京都市左京区岡崎)
  事務局:60601京都市左京区吉田近衛町 京都大学医学部解剖学第一講座内
                  日本動物実験代替法学会第 9回大会事務局
                       FAX075751 7529
                       TEL075753 4341

  
 


大野忠夫会員が AFAAR賞を受賞

 本年2Sweden MEIC事務局より、大野忠夫会員がAFAAR 賞(American  Fund for  Alternatives  to Animal  Research New York )を受賞したとの知らせが届きました。

 この賞はMEIC のバリデーションスタディの参加者すべてが候補としてノミネートされ、その中からヒトのリスクを推定するのに重要と思われる項目の細胞毒性試験を実施している研究者に与えられる賞として設けられました。最終選考は 8名の候補者が残り、大野会員のグループが報告した cell growth  inhibition ce1l kil1ing を同じ培養系でみるLDH  content/releaseアッセイによる研究が、見事、$ 10000AFAAR 賞を受賞しました。

 昨年11 月にも、MEICの参加メンバーである今井弘一会員が BODY SHOP 賞を受賞しており、国際的な場で本学会会員の地道な研究が認められ、大変喜ばしいかぎりです。

  おめでとうございます。                        (田中憲穂 記)

  


8In Vitro Toxicology ワークショップ(INVITOX94)に参加して

                         (財)食品薬品安金センター秦野研究所 佐々木澄志

 はじめに

 スイスのチューリッヒから車で約30 分の位置に、12世紀に建てられた修道院 Kartause Ittingen がある。この修道院はぶどう畑と牧場が広がる丘陵地帯の中腹部にたたずみ、そのふもとにはドナウ川に続く支流が流れている。現在 Kartause Ittingen は、このような非常にめぐまれた環境の中、白家製のビ一ル、ワイン、チーズなどを生産すると共に、内部を博物館として一般に公開している。それに加え、中世の雰囲気を壊すことなくホテルとセミナー会場があるため、保養所及び会議場としても使用されている。
 ここにおいて、19949 2023 日にReinhardt SIAT、スイス)を主催者として第8International International Worksh  on  In Vitro  Toxicology INVITOX94)が開催された。参加人数は約 120名、殆とがヨーロッパの研究者であり、日本からは筆者と大野忠夫(理研、細胞バンク)が参加した。招待講演者以外、全員ポスター発表であったが、一人 5分位ずつ簡単な口頭発表も行った。全部で 73演題が出され、その殆とが培養細胞を用いた実験であった。以下の二つの研究開発が、培養細胞を用いた毒性試験において重要になると考えられたので、それに沿って代表的な報告を紹介し感想を述べたい。 
 

生体内に近い機能を維持した細胞培養系の開発

 よく知られているように、細胞は動物個体から分離し、培養系に移すと徐々にその組織独自の機能を失っていく。そのような細胞を使っていては毒性を正しく評価できない。 P450は化学物質の代謝に最も重要と思われる酵素である。このことから、 p450遺伝子導入細胞の樹立が試みられた。 CrespiGentest 、アメリカ)らはp450遺伝子をヒトリンパ芽球様細胞( lymphoblastoid lymphoblastoid ce)に導入した。また PfeiferNestle 、スイス)らは、まずヒト気管及び肝細胞をSV40 で無限増殖するようにした後、P450遺伝子を導入した。これらの細胞は、 P450遺伝子を安定に発現し、細胞毒性及び遺伝毒性試験に使用されている。

 また培養方法を工夫すると、細胞は生体内で観察される機能を示すようになる。表皮角化細胞の三次元培養が良い例であるが、これは既に商品化され、化学物質や UVの影響を見るために用いられている。
 ヒトに対する毒性を評価するには、その化学物質が関係すると思われるヒト組織由来で、かつ機能を維持した細胞を用いるのが全体の流れとなっている。これを象徴することとして、ある研究者は機能を失った細胞を「 Stupid ce1l 」、機能を獲得した細胞を「Educated  cel1」と称し、他の研究者もこの言葉を引用していたのが印象深かった。
 

毒性機構を解析する方法の開発

 毒性機構の解析にも分子生物学的手法が取り入れられ、試験の簡便化が進んでいる。毒性機構を分子レベルで調べることができるようになった結果、各毒性に対し特異的に反応するプロモーター遺伝子が分かり、そしてクローニングされた。          
 FarrXenometrix、アメリカ)らは、重金属イオンや芳香属炭化水素など 14種の毒性物質と反応するプロモーター遺伝子を CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子と連結させ、それぞれヒト肝細胞に導入した。これら 14種の細胞を96 穴マルチディッシュに播種し、化学物質を添加後、CATELISA法で分析する。細胞毒性試験も平行して行うことができるので、 24時間以内に一度にどの毒性機構が働いたか判定できる。つまり、 14種の異なった毒性機構を一つの方法で検出する実験系である。
 HorbachUtrecht大学、オランダ)らも CAT遺伝子とホタルのルシフェラーゼ発現ベクターを用い同様の実験を行っている。
 つまり、細胞が元々持っていない遺伝子をレポーター遺伝子として導入することで、簡単に毒性機構を解析できるようになった。上記の P450遺伝子導入の実験では内在性の遺伝子を使っているのと対照的に、細胞が本来所有していない機能を持たせ、それを指標とすることで毒性を評価している。内在性と外来性の遺伝子、及び細胞種の組み合わせを変えることで、よりよい実験系の開発が期待される。 
 

おわりに

  今回の学会に参加して、大学などの研究機関のみならず多くの企業も in Vitro 毒性試験系を開発し、採用していることが分かった。また幾つもの細胞や試験キットが売り出されていることは、それだけ使用者が存在していることを示し、製品開発や環境モニターにおいて in Vitro 毒性試験はますます重要な地位を占めるようになっていくと思われる。ただ、今のところこれらの市販品は値段が非常に高い点が利用しにくい原因となっている。
 in  Vitro毒性試験の特徴として、早い、低コスト、正確、客観的、高再現性、高感受性、毒性機構の解析が可能、といった点がよく上げられる。しかしいくら簡単と思われる実験系でも、プロトコールと技術力がしっかりしていなければ間違った値が出てしまう。これは日本動物実験代替法学会と EC/UKが行ったバリデーションが証明している。これらの結果は今年に、 AATEX誌とToxico1ogy  In  Vitro誌にそれぞれ掲載される予定である。

 今回の各研究発表は、Toxicology  In  Vitro誌の特別号として出版される。 INVITOXは二年に一回ヨ一ロッパで行われる学会で、次回は 1996年にBlaauboerUtrecht大学)が主催者となり、オランダで開かれる予定である。ヨーロッパの研究動向を知りたい方は参加するのがいいと思われる。本ワークショップには、日本動物実験代替法学会の助成金によって参加いたしました。ここに深く感謝します。

 


ECVAM会議出席報告

                              資生堂ライフサイエンス研究所
                                                     CBRC(ボストン・皮膚科学研究所)加藤 忍

  動物試験の代替法の開発研究とともにどのような代替法が有用であるかという評価研究( Validation)が世界的な規模で展開される中で、欧州の中心的な活動母体として期待される ECVAMEuropean  Center  for the  Va1idation  of Alternative  Methods)の研究施設の開所式と記念シンポジウムが昨年 1017 日及び18日にイタリアの Ispraで開催されました。ミラノから車で約 1時間のところに位置するこの地は保養地として夏には賑わうようでありますが、地図ではなかなか見つけられないような閑静な田舎町です。開所式はベルギー皇太子殿下の祝辞に始まり、欧州議会や動物愛護団体の代表者、 Johns Hopkins 大学のDr Goldbergが祝辞を述べ、ECVAM 研究所長のDr Ballsの門出を祝いました。DrBallsは数年前に日本動物実験代替法学会にも招かれて出席されているのでみなさんもご承知と思いますが、英国の Nottingham大学教授を務められ、 FRAMEの中心的な役割を果たされた後、 ECVAMで新たな活動を開始されることになったわけで、動物愛護の面でのアプローチとともに科学的な妥当性を念頭に責任ある活動を新任に当たっての決意として述べました。将来はさらに拡張する予定ですが、現有の約千平方メートルの研究施設はこじんまりとしていて、しかも有機的な印象を受けました。 翌日のシンポジウムでは様々な領域における Va1idationの進歩、必要な用件、研究推進における問題点などが議論されました。私が参加したラウンド・テーブル討論「化粧品の安全性と代替法」はユニリバー(英)、プロクター・アンド・ギャンブル(米)、ロレアール(仏)及び資生堂の化粧品各社がどのような代替法を用いているのかを紹介し、今後の代替法の社会的な認知の可能性を議論する目的でありました。他の方の報告は既に一昨年のボルティモアの学会で紹介された内容が主でありました。私は、資生堂における代替法開発に当たっての基本的な考え方、化粧品の安全性を確認するために対象となる多肢の試験法の代替法開発の内容、研究の成果を日本動物実験代替法学会などに発表することを心がけていることを述べました。さらに、日・米・欧の眼刺激性試験で行われている Validation計画の比較をするとともに、わが国における化粧品業界全体の活動として厚生科学研究及び学会の Va1idation計画への参加を紹介しました。また、学会のプログラムとして若手研究者への研究助成、ゴールデン・プレゼンテーション賞などによる研究支援に言及しました。代替法が社会的に受け入れられるためには方法の科学性が大切であり、反応機構が複雑な生体現象の代替には時間がかかることを述べました。シンポジウムの内容はいずれ出版される予定です。

 Validation の国際調和が大切な時代になってきたように思います。
 
 


 

2nd World Congress On Alternatives andAnimal Use In The Life Sciencesのご案内

October20 241996Utrecht The Netherland
Ordinating  Co Chairs
Bert  Van  Zutphen
Utrecht  University
MichaelBalls
Ecvam
EC  Joint Research  Centre
Ispra Italy 
Sponsors/Contributors
CAAT/Johns  Hopkins  University
ECVAM
・L’Oreal
ProcterGamble
Solvay  Duphar
Unilever

Avon
CibaGeigy
ColgatePalmolive  Co
European  comission
Hildegard  DocrenkampGerhard  Zbinden Foundation
HoffmannLa  Roche
Human  Society  Of The  Us
Sandoz
Utrecht  University

Mailing  address
Fbu  Congress  Bureau
Utrecht  University
P OBox80125
3508 TC  Utrecht
Netherlands
Tel:* 3130 535044/2728
Fax :* 3130 533667
E MailLDonkers PoboxRuuNl
 
 
Members  Of  Committees and  Sponsors  Of The2nd  World  Congress On  Alternatives  and Animal
Use  In The  Life  Sciences
 
16 January  1995
95/02/Lz/Ld

Dear  colleagues.

Please  find enclosed  four  copies of  the  firstAnnouncement(= mailing list  invitation ofThe 2nd world  congress  on alternatives  andAnimal  use in  the  life sciencesThis  first Announcement  of the  congress  willsoon be Sent  to the  addresses that  have  been made Available  by  alan goldberg  of  CAATThe Iist  contains  almost 30000  addresses.
We  would like  to  ask your  assistance  infurther  Distributing  this informationas  we have Another  10 000 copies  of  the first  announcement  availableIf  you  are associated  with A  society or  other  organization with  members Who  might be  interested  in the1996 congressWe  would be  very  gratefulif you could  use That  channelfor the  announcement  of the Congress and provide  us  with the  name  of the Secretaryso  that we  can  contact him/her  To ask  for  collaboration
Also if youare  planning  to attend  a  meeting symposium/congress in one of the fields of  Interest  of  the1996 world congress  on Alternativeswe  would be  gratefulif  you Could take  some  copies of  the  announcement With you Pleaselet us know  how  many copies You  would  like to  receive  for further Distribution  (please  indicate the  purpose sothat we  can  check if  your  target group  has Been  informed previously ).We  also would  appreciate  your help  in Providing  us with  the  addresses of  the  editors Of relevant  journals sothat we  n  ask them To  inciude  the announcement  of  the 1996 Congress  in  their next  issue.

If you  feel that  you  are able  to  respond to This  request  we would  appreciate  receiving Your  response before15 february 1995.

Thank  you in  advance.

Bert  van zutphen
Utrecht  university

Miehael balls
Ecvam.
 

Venue  of the  congress
The  venue ofthe  world  congresswill be  theTrade  centre hallof  utrecht which is  located Close  to  the main  raiiway  stationUtrecht
Is  easy to  reach it is  centrally  located in  the Netherlands  and  has excellent  access by both Road  and  railto  schiphol  international airport
At  amsterdamThe  city  of utrecht  originates From a  roman  settllement founded  in48 ad. In  the middle  ages it developed  into  one of The  most important  cities  ofthe 16th centuryUtrecht  stillhas many  unique  churchesHouses  and  canals which  date  fromthis period  Of prosperity .Utrecht  universitywithalmost  25000studentshas  a history  of  more than Three  and  a half  centuries.  It includes  all The  biomedical disciplinesand  has the Only  faculty  of veterinary  medicine  in the Netherlands.
Scope  of the  congress
The  aim of  the  congress is  to  promote Exchange  of information  on  recent developments  In the  field  of afternatives  to  animaluse  replacementreduction refinementandin Particularto  review the  progress  that has Been  made  in this  respect  within the  fields  of Biomedicalresearch testing and  education Platform sessions  and  workshop discussions  Will be organized  to  facilitate an  objective Assessment  ofthe  alternatives and  their  statusThe  congress  also aims  to  contribute toOngoing  dialogue  among the  animal  protection Movement the scientific  community the Regulatory  authorities and  industry.
 
 
Programme  commiiee
A programme co oitteehas been establishedWith60 members  from15diifferent countriesAil  of whom  are  experts in  their  fieldsgrammecommittee members also represent Associations  or institutions  that  are involved In  for  supporting the  organization  of this CongressSuch  as ECVAMERGATT ECFEP SFELASAJSAAE NTHOECD.
 
Mailing  address
World  Congress Alternatives 1996 Fbu ConGressBureau  P OBox80125 3508TC  Utrecht The Netherlands
Phone: 十 313053 5044/2728
Fax:十 313053 3667   
Email LdonkersPoboxruu nl
 
 
Sponsors
CAAT Johns Hopkins  University
ECVAM
L’Oreal
Procter  Gamble
Solvay  Duphar
Unilever
 
Contributors
Avon
Ciba Geigy
Colgate Palmolive Company
European  comission
Hildegard  Doerenkamp
 Gerhard  Zbinden  Foundation
Hoffmane La Roche
Human  Society Of  The  Us
Sandoz
Utrecht  University

 (as  On  January l1995

Mailing  List  Invitation
You  are invited  to  attend The2nd  World  Congress On  Alternatives  and AnimalUse In The Life Sciences20240ctober 1996 Utrecht The Netherlands
To  be included  in  subsequent mailings  or  to Update your  address please full  in  this cardor  attach your  business  card) and  return  it
By  mail or  fax to the  congress  secretariatYouwill  then  automatically receive  further Announcements  and  a callfor  papers. 

 


ヨーロッパにおける動物試験禁止について

 19922 12日、欧州議会は、19981 1日以降、化粧品に含まれる原料の安全性を調べる動物試験を禁止する修正「化粧品に関する法令 76/768号」を可決した。なお、検討専門委員会は、もし動物試験に代わる新しい代替法が開発されない場合には、 1998年の期限を最高2 年間まで延長できることを決めた。欧州議会は、12 ケ国、3 2千万人の国民の代表として518 人の議員により構成されており、世界最大の商業圏である。この新しい禁止法令は、動物試験で調べられたヨーロッパ製品または原料を含む製品、さらにはヨーロッパ以外で生産された製品で、ヨーロッパで販売するすべての製品に対して適応される。しかしながら、化成品については、この法令の除外となる。 76/768号法令は欧州内やならびに国際的な動物保護運動家による広範なキャンペーンの活動により修正された。 19926 月には、この法令の修正要求について250 万人からなる署名が集められ、欧州議会環境委員の委員長宛に提出された。また、動物試験反対の大会や議会に対するロビー活動がこの運動の成功に大きく貢献した。現時点では、このヨーロッパにおける法令がアメリカや他の諸国の法律や産業活動に対してどのような影響を与えるのかまだ予測ができない。しかしながら、この法令の修正案可決は、動物保護主義は無視できないものであり、将来大きな政治的影響力を与えることを示す結果となった。

                        ( Animals and  Alternatives  in Testing より)


Harvest Mouse And Technomouse −モノクローナル抗体産生をinvitro

  モノクローナル抗体を生産するには in vivoin  vitroの方法があるが、従来はin  vitroでは産生量が十分得られないとしてマウスの腹腔内に hybridomaを移植して腹水中に抗体を産出させる方法がとられていた。しかしこれには動物倫理の立場から激しい非難がなされていた。 これに対してイギリスでは hollow fiber  techniqueを用いて大量の産生を可能にする系が開発され Harvest Mouse となずけてSerotec  Ltd.22BanksideStation  ApproachKidlingtonOxford OX5 1JU K。)から発売された。モノクローナル抗体の大きな需要の伸びから考えて今後この HarvestMouseが英米で広く使用されるものと期待されている。 またスイスでは 1995年からモノクローナル抗体の生産に動物を使用することは出来ないであろう。スイスでは 1980年代に毎年1 万匹のマウスがこの目的に使用されていた。最近この数は減少しつつあるが、
1995年からはこの目的に動物を使うことは特別の例外的な場合を除いては許可されないであろう。これは invitroでモノクローナル抗体を産生する Technomouseという系が十分動物に代わりうるというスイス連邦獣医局の決定によるものである。

                         ( ATLA22411Nov/Dec1994より。 TS.

 
  



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