第29回日本動物実験代替法学会

大会長挨拶

大会長挨拶

 日本動物実験代替法学会では、動物実験の適切な施行の国際原則である3Rs: Replacement(動物を用いない代替法への置換)、Reduction(動物数の削減)、Refinement(動物に対する苦痛軽減)の推進と普及を目的とし、3Rsに係る研究、開発、教育調査等を行ってきました。こうした状況の中で、日本動物実験代替法学会第29回大会を2016年11月16日(水)~18日(金)の3日間、九州大学医学部百年講堂において開催させていただくことになりました。

 日本動物実験代替法学会が推奨する動物実験の適切な施行の国際原則である3Rsの原則は1959年にラッセルとバーチが提唱し、1999年の第3回国際代替法会議でボロニア宣言として採択された動物実験を行う上での基本原則です。この原則は近年の実験動物福祉に関係する各国の法律や指針だけでなく、国際基準や国際指針に採用されています。動物実験代替法は、初期に化粧品の評価に適用され、医薬品、医療機器、一般化学物質等の安全性評価のためにその開発の必要性が認識されました。その結果、経済協力開発機構(OECD)、国際標準化機構(ISO)、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)等の国際機関でも新たな試験法が多く提案されております。動物実験代替法の開発・バリデーションを促進するため、欧州では欧州代替法評価センター(ECVAM)が、米国では動物実験代替法に関する評価を行う複数省庁の合同委員会(ICCVAM)が設立されました。国際的な動物実験代替法の技術革新の流れは大きく、化学物質の安全性再評価と動物実験代替法の技術革新を求めた欧州の化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規制(REACH)は、日本にも大きな影響が及んでいます。すぐれた医薬品をいち早く患者のもとへ届けるために発足した(ICH)の理念に3Rsがあります。

 最近では、化粧品に加えて、医薬品、医療機器、一般化学物質など多岐にわたる産業・学問への応用の機運も高まっています。さらに代替法の発展・普及を目指すためには、異分野の連携を追求していくことが肝要であります。そこで、今回の第29回大会は、代替法の深化、新しい学術領域の開拓を目指して、「分子-細胞-個体の視点からの代替法」とテーマを掲げ、また異分野や次世代の若手研究者の参加促進を目指しました。特別講演や教育講演の他、シンポジウムを企画し、化粧品業界ばかりではなく化学物質ならびに医薬品などの業界の方々も視野に入れ、幅広い分野の方々にご関心を抱いていただけるようにいたしました。シンポジウムは、「化粧品、医薬品の安全性試験代替法の動向」、「動物実験代替法における新たな技術展開」、「分子―細胞―個体の視点からのシステムバイオロジー」、「代替法における産業応用(初期スクリーニング手法)」、「iPS細胞の実用化研究の最前線」、「個体の視点からの代替法」、「分子・細胞機能に基づいた個体レベルにおける薬物動態ならびに個人間変動予測の最前線」、「時間生物学における代替法研究~細胞・個体における概日リズム機構とその応用~」を取り上げました。また「科学への関心向上」や「健康づくりの普及」を考え、市民公開講座も企画しております。本学会では、代替法の最先端の研究成果をはじめ、代替法に関わる理論、技術、研究対象などについての最新の成果を発表討論していただきます。

 最後になりましたが、本学会の開催に際し、主催の動物実験代替法学会、ご支援いただきます各種企業、団体、また特別講演、シンポジウムの演者、座長、オーガナイザーの皆様、さらにご参加、ご発表いただく皆々様方のご協力に対し、大会長として心から感謝申し上げます。

謹白

第29回日本動物実験代替法学会
大会長 大戸 茂弘
(九州大学大学院薬学研究院 研究院長・教授)

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