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学会レポート

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CINP summit 2013およびThinkTank会議 2013年11月23〜26日(ミュンヘン)
理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム 加藤忠史

 
 CINP summit 2013は、向精神薬開発が困難に直面している現状の中、産官学で連携して技術革新を起こすために何をすべきかを世界の各界代表が集まって議論するため、CINP(国際神経精神薬理学会)理事会の発案で行われた。大学・研究所および製薬会社の研究者、規制当局等、約50名が参加して行われ、CINPのpresident electである当学会の山脇成人理事長をはじめ、日本からの参加者が約3分の1をしめ、プレゼンスを発揮した。

 初日は、「科学と規制をつなぐ」「リスクベネフィット、有効性の研究および臨床診療への導入」「知識の移転と発明の保護」「治療効果の新評価ツールに関する21世紀のパースペクティブの必要性」「脳研究への投資の促進」の5グループに分かれ、22時まで議論が行われた。翌日は、NIMHのInsel所長の他、アカデミア、製薬、PMDAからの発表の後、再び5グループに分かれて議論をまとめ、文書を完成し、各グループ代表が議論の結果を発表し、最後にその中でも何が重要かという意見の集約を行った。バイオマーカー開発の重要性、当事者の発言力増加、官民連携の重要性等が共通認識となった。

 議論の結果は、ホワイトペーパーとしてまとめ、Natureにコメンタリーとして投稿する予定となっているので、詳細はそちらをご覧いただくとして、簡単に感想を述べたい。

 製薬会社の研究者の発表では、ゲノム研究に基づいてモデル動物を作り、その脳病態を解明して、創薬ターゲットを定める、といったアカデミアと変わらない戦略が示され、もはや誘導体を作って強制水泳等で確認するといった旧態依然とした方法で創薬しようという会社は存在しないようである。精神疾患の新たな創薬戦略として、1)認知、衝動性などの「症候」を対象とした創薬、2)精神疾患の中の特定の脳病態を持った一群に対する根本治療薬を開発しその後対象の拡大を目指す、という両極端な方向がある。Insel氏の提唱するRDoC (research domain criteria)は、前者の戦略を念頭に置いているように思われた。

 後半2日は、ThinkTankという、バイオマーカーについての会議であり、こちらも、議論の成果をInternational Journal of Neuropsychopharmacology誌に投稿予定である。

 Insel氏は、これまでのバイオマーカー研究の問題点として、「DSM/ICDの専政」「両極端の比較」「パワーの低い研究」「部分的な再現」「単一マーカーに焦点を当てていること」を挙げた。今のところ実現に近いのは薬の副作用のマーカーである。一方、前立腺癌に対するPSAのように、特異性のないマーカーで必要ない治療が行われることがあってはならないと述べた。その他、Innovative Medicines Initiativeという官民連携プロジェクトや、Bahn氏による統合失調症のバイオマーカー開発の現状など、バイオマーカー研究の先端の状況が紹介された。統合失調症では、代謝マーカー、ホルモン、サイトカイン、ニューロトロフィンなどの組み合わせで、かなり有意義なデータが得られつつあるようであった。

 全体として、これら2つの会議は、精神疾患の治療法開発に向けて産官学が連携していくにあたり、共通認識を確認するという点で意義のあるものであった。 
CINPサミット(Sofitel Hotel)    
日本からの参加者:PMDA(審査センター長矢守隆夫先生、中林哲夫先生)、大塚製薬、大日本住友製薬、エーザイ、アステラス製薬)、およびThinkTank参加者5名

ThinkTank会議(アルツハイマーホール)
日本からの参加者:山脇成人先生、樋口輝彦先生、尾崎紀夫先生、須原哲也先生、加藤忠史