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学会レポート

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学会レポートシリーズ 2016年国際神経精神薬理学会
(CINP: The International College of Neuropsychopharmacology)

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部 小川 眞太朗

2016年7月3 - 5日、韓国ソウルで開催された 30th CINP World Congress of Neuropsychopharmacology (CINP2016) に参加しました。

初めての韓国。江南エリアの中でも、開催会場となったCOEXの周辺は瀟洒なビジネス街といった趣でした。COEXのホームページを眺めてみると、「Coexは、江南MICE観光特区である貿易センターを、アジアにおけるMICEビジネスの中心地として育成」(http://www.coex.co.kr/) とあり、この「MICE」はきっとマウスの複数形ではないのだろうと思っていたところ、実際は Meeting・Incentive・Convention・Exhibition の頭文字だそう。会議誘致を核として、交通や観光を一体とした、韓国政府による国を挙げての産業政策らしいです。確かに、韓国では空港から江南エリアへのアクセスも良く、ホテルの選択肢も多く、会議場となったCOEXはとても広大で、会議後に夕食を食べに行くレストランや観光名所も多く、快適でした。ソウルのみならず韓国全土でMICEを中心とした取り組みが行なわれているようで、国の政策として会議誘致を経済活性化のために活用しているらしいです。こういった取り組みはとてもユニークではないでしょうか。韓国での国際会議の開催数は高い伸び率を示しています。日本でも、日本の観光資源や食文化的な特色なども織り交ぜて、国際会議や学術交流を中心とした総合的な産業政策を打ち出せたら、海外の多くの研究者にとってさらに魅力的な目的地となるに違いありません。

今回のCINPは、私が初めて参加する海外での国際学会です。韓国での開催ということからアジア圏の研究者の参加も多かったですし、また、日本神経精神薬理学会からの連続開催ということで日本人も多かったのですが、やはり国際学会。英語でのコミュニケーションはもちろん前提であり、ポスターセッションでも海外のネイティブスピーカーがナチュラルに猛スピードで話しかけてきてろくに対応ができず、敗北感とともに英語力が足りないことを痛感しました。しかし、別の人とは意志がとてもうまく疎通できたと思えた瞬間もあり、感覚としては3勝3敗4分けくらいでしょうか。ただ、こういった場に身を置くことで初めて自分の立っている位置がわかるので、むしろ今後は積極的に海外の学会に参加していかないといけませんね。

私の研究テーマであるうつ病については、病態機序がいまだ不明であり、従来の抗うつ薬の奏功割合も決して高いとは言えず、ケタミンという従来のモノアミン仮説以外の作用機序に基づく新たな薬剤は登場したものの、さらなる抗うつ剤の開発が求められています。私が一番聞きたかったのは、CINP2日目の ”Evidence for novel classes of anti-depression agents beyond ketamine” と題されたシンポジウムでした。台湾のProf. Hsien-Yuan Laneによるグリシントランスポーター1 (GlyT1) を標的とした新規抗うつ剤の開発についての話が特に興味深かったです。ジペプチドであるサルコシンをマウスに投与するとGlyT1の抑制を介して抗うつ様作用を示すという話が出てきました。サルコシンは近年開発されている第二世代GlyT1阻害剤よりも作用は強くないものの、食事からも摂取可能なアミノ酸(ペプチド)が単独で抗うつ作用を示すというような事例は実際のところあまり報告がなく、面白いです。脳の中でアミノ酸関連分子は非常に多彩で重要な役割を担っています。私もアミノ酸を中心としてのうつ病のマーカーや病態機序、新たな治療法を探る研究を進めていますが、改めて感じたのは、アミノ酸を中心とした研究はポテンシャルが大きいということでした。今回、日本神経精神薬理学会より、栄えある JSNP Excellent Presentation Award for CINP 2016 も頂きました。この賞を励みにして、いっそうがんばっていきたいと思います。うつ病の病態機序の解明につながる研究、新規創薬につながる研究、バイオマーカーを確立する研究をめざして。

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