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学会レポート

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学会レポートシリーズ 2017年アジア神経精神薬理学会
(AsCNP:Asian College of Neuropsychopharmacology)

金沢医科大学医学部精神神経科学 大井 一高

私は、2017年4月27日から29日にかけてインドネシアのバリ・Bali International Convention Centerにて開催されました第5回アジア神経精神薬理学会 (5th Asian College of Neuropsychopharmacology; AsCNP 2017) に参加し、Young Psychiatrist AwardおよびJSNP Excellent Presentation Award for AsCNP 2017を頂きました。日々の研究成果が、このような名誉ある受賞に繋がり、大変嬉しく思っております。バリを訪れたのは、今回の学会が初めてでした。天候にも恵まれ、世界遺産にも登録されておりバリ島で最も美しいとされるタマン・アユン寺院や海の上に浮かぶ神秘的なタナ・ロット寺院などのバリの名所を観光した他、ナシゴレンやミーゴレンなどのインドネシア料理を堪能してきました。

私が今回上記の賞を頂きました内容を、簡単ではありますが、まとめさせて頂きます。統合失調症は、民族差なく人口の約1%が罹患し、80%の高い遺伝率を示す多因子遺伝疾患であり、病態には多数の遺伝子が関与しています。これまでに、Psychiatric Genomics Consortiumにより世界中から36,989名の統合失調症と113,075名の健常対象者サンプルを集めて行われた大規模な全ゲノム関連解析研究(Genome-wide association study: GWAS)では、108ゲノム座位に存在する独立した128個の遺伝子多型が疾患の病態に関わることを見出しています。しかし、この大規模GWASは世界中からサンプルを集めていますが、サンプルの大部分はヨーロッパ白色人種由来であり、アジア人サンプルは1,836名の統合失調症と3,383名の健常者に限られています。

本研究では、統合失調症は民族差なく1%の頻度で罹患し、遺伝率は80%であるというエビデンスに基づき、大規模GWASにて同定した128個の遺伝子多型の民族間の差異を検討しました。1000 Genomes ProjectにおけるAfrican(AFR)、American(AMR)、East Asian(EAS)、European(EUR)、South Asian(SAS)サンプルを用いて、民族間における128個の遺伝子多型のアレル頻度のばらつき(Variability Index: VI)を算出しました。VIを用いてうまく民族間におけるアレル頻度のばらつきを検出できました。例えば、ばらつきの最も小さいrs36068923のEAS, EUR, AFR, AMR, SASのマイナーアレル頻度はそれぞれ0.189, 0.192, 0.256, 0.183, 0.194でした。一方、ばらつきの最も大きいrs7432375は0.791, 0.435, 0.041, 0.594, 0.508でした。さらに、GWASの主な構成民族であるEURとEAS間で128個の遺伝子多型のアレル頻度の差異を検討したところ、約70%に民族間のアレル頻度に有意な差異を認めました。しかし、Polygenic risk scoreの概念の様に、128個の遺伝子多型のアレル頻度を平均すると、民族間で差異を認めませんでした。以上の結果より、個々の遺伝子多型が疾患に寄与する割合は民族間で異なりますが、その総和では違いを認めず、このことが民族差なく約1%の生涯罹患率に繋がっているのではないかということが示唆されました。

また、本学会では、アジア諸国の若手研究者が集うEarly Career Psychiatrist Gathering Nightにも参加させて頂き、同年代の研究者の熱意のあるプレゼンテーションを聞くことができ、さらに、交流する機会もあり、大きな刺激を受けました。

末筆となりましたが、今回のYoung Psychiatrist AwardおよびJSNP Excellent Presentation Award for AsCNP 2017の受賞にあたり、常日頃よりご指導ご鞭撻を賜りました皆様、および学会関係者の皆様に深く御礼申し上げます。この受賞を糧に、更に日々の研究に邁進していきたいと思いますので今後とも宜しくお願い申し上げます。

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