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統合失調症モデル動物:陰性症状の評価法
2013.4
吉見 陽、肥田裕丈、野田幸裕 
名城大学大学院薬学研究科病態解析学

統合失調症のモデル動物として、ドパミン仮説に基づく覚醒剤投与動物、グルタミン酸仮説に基づくフェンシクリジン(PCP)投与動物、神経発達障害仮説に基づく新生仔期腹側海馬損傷動物および統合失調症に関連した候補遺伝子を改変した動物が作製されている1-3)。作製されたモデル動物において、統合失調症に認められる陽性症状、陰性症状や認知機能障害などと類似した精神行動障害が認められるかどうかの行動学的評価が行われている。その中で、陰性症状の行動解析方法として、マウスやラットにおける社会性行動試験や強制水泳試験が用いられている。社会性行動試験では、別々のケージで飼育され、それまで接触する機会の無かった2匹のマウスやラットを同時に観察ケージに入れると、お互いに匂いを嗅ぐ、毛繕いをする、後をついて歩くといった社会性行動を示す。観察ケージに入れてから10分間のマウスやラットの行動を録画し、社会性行動を示した時間を測定することで定量化を行う1, 2)。この試験はマウスやラットの行動が活発な夜間、もしくはあらかじめ飼育室の明暗サイクルを逆転しておいて暗期に実施するのが望ましい。強制水泳試験では、やや暗めの実験室で水を入れた狭いシリンダーにマウスやラットを入れると、次第に水に浮かんで動かない状態(無動化あるいは絶望状態)になる1, 2)。赤外線フォトセンサーを備えた自動測定装置を用いれば、自動的にマウスやラットが浮かんで動かない時間(無動時間)を定量的に測定することができる。自動測定装置がない場合は、ストップウォッチを用いて測定を行う。この無動状態を呈した時間を意欲の低下の指標と捉える。これらの行動障害のいずれか、あるいは両方が、薬理学的モデル(PCP投与など)、神経発達障害モデル(新生仔期腹側海馬損傷、周産期感染など)あるいは遺伝子[DISC1(disrupted in schizophrenia-1)、NRG1(neuregulin 1)、DTNBP1(dystrobrevin binding protein 1)、NR1(N-methyl-D-aspartate receptor subunit NR1)やカルシニューリン(CNB1:protein phosphatase 2B regulatory subunit 1)など]改変モデルにおいて認められている1-3)。こうしたモデル動物を用いた研究は、統合失調症の病態解明、新規治療薬の開発に貢献できるものと思われる。

【文 献】
1) Enomoto T, Noda Y, Nabeshima T:Phencyclidine and genetic animal models of schizophrenia developed in relation to the glutamate hypothesis. Methods Find Exp Clin Pharmacol, 29:291-301, 2007
2) 野田 幸裕、鍋島 俊隆、毛利 彰宏:第T編 基礎編 行動研究における実験技術 10統合失調症モデルとその評価法.実験薬理学 実践行動薬理学.pp.79-93,(社団)日本薬理学会編集,金芳堂(東京),2010
3) 毛利 彰宏、谷口 将之、野田 幸裕、鍋島 俊隆:統合失調症のモデル動物:行動薬理学的妥当性.Progress in Medicine, 32:2339-2350, 2012