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NeuropsychoTRENDS

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カンナビノイドシステム
2013.5
渡辺雅幸
昭和大学保健医療学部

マリファナの成分であるカンナビノイド系に関する生物学は近年大きく進展し、カンナビノイド系に作用する薬剤は様々な病態への治療薬として期待されている。生体内にはカンナビノイドが結合するCB1とCB2の2種類の受容体が存在する。CB1受容体は主に脳内に、CB2受容体は免疫系の細胞に存在する。両受容体とも7回膜貫通型受容体ファミリーに属し、アデニル酸シクラーゼを阻害し、MAPキナーゼを活性化させる。カンナビノイド受容体への内因性リガンドとしてアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が存在する。脳内CB1受容体はシナプス前神経終末に局在し、シナプス後細胞から放出された内因性カンナビノイド(特に2-AG)は逆行性にシナプス前からのグルタミン酸、GABAなど他の伝達物質放出を抑制する。CB1受容体を介する脳内カンナビノイド系は視床下部のエネルギー恒常性機構や中脳辺縁ドパミン系の脳内報酬系と関連して摂食増加、物質依存を惹起する方向に作用する。その結果、CB1受容体の特異的拮抗薬(リモナバン)は食欲抑制効果を生じて肥満症の治療薬となることが有望視され、さらに喫煙抑制等の効果も期待されていたが、副作用としてうつ状態を引き起こすため開発が中止となった。また脳内カンナビノイド系は動物の恐怖条件づけ実験で不快記憶の消去を促進させる方向に働く。そのことからCB1受容体を賦活する薬剤が恐怖症、PTSDなどの不安障害治療薬として有望とされる。またカンナビノイド系は免疫系細胞のCB2受容体を介して炎症性サイトカイン等を抑制し、さらに脳内CB1受容体刺激によって細胞毒性のあるグルタミン酸放出を抑制して神経保護作用を有していると考えられる。事実、近年、カンナビノイド系薬物(ナビキシモルス)は多発性硬化症による痙縮、神経障害性疼痛、過活動膀胱の治療薬として各国で使用され始めている。

【文 献】
1) 山本経之. (2007) カンナビノイド受容体―中枢神経系における役割. 日薬理誌, 130, 135-140.
2) 橋本谷祐輝 他. (2011)シナプス伝達を修飾する脂質メデイエーター 内因性カンナビノイド. 日本神経精神薬理学雑誌, 31, 105-109.
3) Saito, V.M. et al. (2012) Cannabinoid modulation of neuroinflammatory disorders. Currrent Neuropharmacology, 10, 159-166.