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NeuropsychoTRENDS

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不快指数の神経回路
2008.1
南 雅文
北海道大学大学院薬学研究院薬理学研究室

痛みの情動的側面の研究より「不快情動生成」に関わる脳領域およびそこでの神経情報伝達機構が次第に明らかにされつつある1,2)。興奮性神経毒による前帯状回破壊や同部位へのグルタミン酸受容体拮抗薬、特に、NMDA受容体拮抗薬の投与が、ホルマリン後肢皮下投与の痛みによる不快情動生成を抑制することが、条件付け場所嫌悪性試験(CPA test)を用いて示されており(Proc Natl Acad Sci USA, 98:8077,2001; Nat Neurosci, 7:398, 2004; Exp Neurol, 189:413, 2004)、前帯状回でのNMDA受容体を介したグルタミン酸神経情報伝達亢進が、痛みによる不快情動生成に重要な役割を果たしていることが考えられる。前帯状回に加えて、扁桃体およびその関連脳領域も不快情動生成に重要である。脳局所破壊とCPA testによる行動薬理学的解析を組み合わせた研究により、酢酸腹腔内投与による内臓痛に関する情報は扁桃体中心核(CeA)を介して、一方、ホルマリン後肢皮下投与による体性痛に関する情報は扁桃体基底外側核(BLA)を経て中心核に入った後、不快情動を生成することが示されている(Eur J Neurosci, 18:2343, 2003)。また、体性痛によりBLAにおいてグルタミン酸遊離が増大すること、BLAへのNMDA受容体拮抗薬投与が場所嫌悪反応を抑制することから、体性痛による不快情動生成にBLA内NMDA受容体を介したグルタミン酸神経情報伝達が重要であると考えられる(Neurosci Res, 59:199, 2007)。さらに、「extended amygdala」を構成する脳領域である分界条床核でのノルアドレナリン神経情報伝達亢進が不快情動生成に重要な役割を果たしていることも報告されている。今後、これら脳領域を結ぶ神経回路およびそこで働く神経伝達物質が明らかにされ「不快の神経回路」の全容が解明されることを期待する。

【文 献】
1) 南 雅文(2007)痛みと情動−扁桃体およびその関連脳領域の役割.医学のあゆみ,223: 700-705
2) 南 雅文(2008)痛みによる不快情動生成の神経機構.日本神経精神薬理学雑誌,印刷中