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伝承薬の精神薬理学的評価:更年期女性の気分障害
2013.4
吉村裕之
食品治療学研究所(愛媛大学名誉教授)

女性の更年期症状を緩解させるために、国内外において種々の伝承的な天然物が服用されてきた。西洋医学では、女性ホルモン補充療法が主流であるが、生殖器や心臓に対する有害作用も多く、新たな薬物療法や代替医療の開発が課題となっている。向精神薬の前臨床評価には主に雄性動物が用いられ、雌性動物は性周期に伴う内分泌機能の変動が実験結果を複雑にするとの先入観から、ほとんど用いられて来なかった。ところが、成熟雌マウスの卵巣を両側摘出すると、強制遊泳テストにおける不動時間が有意に延長される現象が観察され、エストロゲンの慢性投与により用量依存的に抑制されること、臨床的に用いられている抗うつ薬の慢性投与でも抑制効果が得られることなどが見出され(2005)、更年期の気分障害のモデルになる可能性が示唆された。この方法論を確立するために詳細な検討を行い、発現機序には5-HT2A受容体が関与している可能性を報告した(2006)。そこで、この動物モデルを用いて、伝承薬から有効成分の探索を行い、薬用人参からginsenoside Rb1とその代謝産物であるcompound K(2011)、ペルシャザクロからphenethyl-D-rutinoside、西洋ボダイジュからkaempferol-3-o-rutinoside, kaempferol-3-o-α-L-rhamnopyranoside, quercetin-3-o-α-L-arabino- pyranoside, quercetin-3-o-β-D-glucopyranosideなどをそれぞれ有効成分として同定し、これらの糖鎖をもつ水溶性物質の作用機序も解明されつつある。

【文 献】
1) Bekku N., Yoshimura H. (2005) Animal model of menopausal depressive-like state in female mice: prolongation of immobility time in the forced swimming test following ovariectomy. Psychopharmacology, 183:300-307.
2) Bekku N., Araki H., Yoshimura H. (2006) Factors producing a menopausal depressive-like state in mice following ovariectomy. Psychopharmacology, 187:170-180.
3) Yamada N., Araki H., Yoshimura H. (2011) Identification of antidepressant-like ingredients in ginseng root using a menopausal depressive-like state in female mice. Psychopharmacology, 216:589-599.