日本神経精神薬理学会
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NeuropsychoTRENDS

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臨床研究の進め方、海外専門誌との関わりについて
2013.4
油井邦雄
芦屋大学大学院アスペルガー研究所
 
私は25年ほど前から覚せい剤精神病のフラッシュバック現象の発現過程について、モノアミン神経伝達機能との関わりから検索してきました。この臨床研究では、ストレス感受性亢進やNE系とDA系との関わり、その、フラッシュバック現象の惹起要因と反復要因、薬物反応性など多方面から解析して来ました。最近8年間は、自閉症スペクトラム障害の薬物療法、その奏効機序、さらにアラキドン酸の治療効果と関連する脳機能病態を検索中です。その経緯の中で感じることは、神経精神薬理学の研究、特に生物学的精神医学の臨床研究は研究者の創意や志向性によって、研究結果の内容やレベルが左右されるということです。

 先ず、治療者として症状の改善をいろいろ工夫して実行して、その自然の成り行きをまとめた際に各症例に共通する知見を見出すことが大事ではないかと考えています。その共通知見は正確にきちんとした手法で得られたものであることは当然の大前提です。予測や先見をまず取り去って、虚心坦懐に出てきた結果を見て、ある傾向や特性を見出し、それを裏付ける作業をするということが必要になります。常套的に集団別にある生体物質の濃度を比較しても有意差もなければ明らかな傾向も見えてこないことが多いので、何を解析したいか、何を明らかにしたいか考えて、その観点からデーターを解析してみることが大事かと愚考しております。 手法がきちんとしていると、必ず生体の脳機能の偏倚した反応が出てきています。

 ヒトの生体現象にはある特性を持つ集団内では共通することが多いので、群別をきちんと行うと興味深い知見が見えてくるでしょう。いくら正確に高級な技術や方法を用いても、ごくごく当たり前の観点で生体現象を切っているのでは、平凡な知見が山積されるだけでしょう。上記のような観点から生体現象をあれこれ切ってみることで、従来の基本的な原則を踏まえた新しい局面を見出す作業こそが研究の醍醐味ではないかと感じています。

 ただ、自閉症スペクトラム障害の研究では対象症例が幼弱ですし、治療経過を見るので、データーはすぐには集積出来きません。また、この自閉症スペクトラム障害の研究はまだまだ専門家がすすくなく、特に私がやっているsignal transduction, antioxidantとの関連は専門家が少ないので、英文誌での審査で大いに苦労します。しかし、世界では誰かがどこかで見て、海外から新しい専門誌の創刊、査読、editorを依頼されて、それなりの意義を感じてはいます。
 海外では実績と能力が評価されてやすいので、あきらめずに積み上げることが大事でしょう。