1.概 況
- 心臓移植は、現存するいかなる内科的・外科的治療を施しても治療できない末期的心不全患者に対して、脳死となったドナーから摘出した心臓を移植することにより、患者の救命、延命、およびクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善することを主たる目的として行われます。
- 心臓移植希望者の日本臓器移植ネットワークへの登録は、「臓器移植に関する法律」が施行された1997年10月から開始されました。心臓移植実施施設として認定された、国立循環器病センター、大阪大学、東北大学、九州大学、埼玉医科大学、東京女子医科大学の6施設で、それぞれ9例、13例、1例、1例、1例、2例の心臓移植が実施され、2例が感染症で死亡されましたが、25例が生存し、23例が外来通院、16例が社会復帰しています(2005年6月17日現在)。
- 現在、心臓移植実施施設として認定されている施設は、国立循環器病センター、大阪大学、東京大学、東北大学、九州大学、埼玉医科大学、東京女子医科大学の7施設です(2005年6月17日現在)。
- 国内での心臓移植が非常に困難な10歳未満の小児22人を含め、61人が法施行後の約8年の間に海外で心臓移植を受けています。この間に海外渡航心臓移植を希望した小児患者(18歳未満)は70人に上り、35人が心臓移植を受けました(うち6人は移植後死亡)が、11人は渡航前に、11人は渡航後待機中に死亡しています。なお、国内で10歳未満男児と10代男児の2人が心臓移植を受け生存しています。最近では、国内でも心臓移植が可能な10歳以上の小児や成人の海外渡航心臓移植が増加しています。
- わが国の心肺同時移植の適応は、心臓、肺の両方とも移植が必要な場合に限られるため、ドミノ移植(レシピエントの心臓を摘出して、別のレシピエントに移植すること)は行えず、したがって生体心臓移植が実施されることはありません。
2.適 応
- 適応疾患は、従来の治療法では救命ないし延命が期待できない重症心疾患で、(1)拡張型心筋症及び拡張相肥大型心筋症、(2)虚血性心筋疾患、(3)その他、日本循環器学会および日本小児循環器学会の心臓移植適応検討会で承認する心臓疾患です。
- 末期的心不全の薬物治療が近年飛躍的に進歩したため、適応条件として心機能的側面 に加え、以下のような条件があげられています。
- 長期間またはくり返し入院治療を必要とする心不全
- β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA III〜IV度から改善しない心不全
- 現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例で、年齢は60歳未満が望ましい。
- 運動耐容能を重視し、最大酸素摂取量peak VO2が14.0 l/min/kg以下を適応としています。
- ただし、以下のような場合には適応となりません。
- 心臓以外の重症疾患(肝腎機能障害、慢性閉塞性肺疾患、悪性腫瘍、重症自己免疫疾患など)
- 活動期の消化性潰瘍や感染症、重症糖尿病、重度の肥満および重症の骨粗鬆症
- アルコール・薬癖、精神神経疾患
- 重度の肺高血圧(最近生じた肺梗塞、高度の不可逆性肺血管病変などで、薬剤を使用しても肺血管抵抗係数が6単位以上、または経肺動脈圧較差が15mmHg以上)
3.移植待機者数
- 心臓移植の再開に伴い心臓移植希望の待機患者数は次第に増加し、2005年4月30日までに204人が心臓移植候補として登録されました。原疾患は、拡張型心筋症150例、拡張相肥大型心筋症15例、拘束型心筋症2例、虚血性心筋症18例、先天性心疾患8例、その他11例です。そのうち、国内で27人に移植が行われましたが、21人は渡航移植し、70人は待機中に亡くなっています。
- 様々な研究結果から、国内の心臓移植適応患者数は年間228〜670人であると推定されています。UNOS(全米臓器分配ネットワーク)の1999年の資料から心筋症で移植を希望した患者数を計算すると3,245人となり、人口当たりの患者数で換算すると、日本で心臓移植が必要な人は約1,600人いることになります。しかし、年間40人前後しか心臓移植登録がされていない現状を考えると、多くの方が登録もせずになくなっていることが推測されます。
4.待機中の死亡者数
- 心臓移植が必要と考えられている、β遮断剤、ACE阻害剤などの薬剤に抵抗性の心不全患者さんの予後は不良で、1年生存率は50%前後しかありません(つまり1年以内に半数の患者さんが死亡します)。
- 先に述べた新規患者数から計算すると、心臓移植の適応がありながら亡くなっている人が年間109人から355人いると推定されます。
- 2005年4月30日までの登録待機患者204人の中で、70人が亡くなっています。
5.年間移植件数
- 法施行後の約8年の間に、国内では27人、海外渡航(アメリカ、ドイツ)では61人(登録患者22人を含む)が心臓移植を受けました。下に年間の移植数を示します。カッコ内は18歳未満の小児心臓移植の数です。
| |
1997.10〜12 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
〜2004.6.17 |
| 国内心臓移植症例数 |
0
|
0
|
3
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3(1)
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6(1)
|
5
|
0
|
5
|
5
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| 海外心臓移植症例数 |
3(1)
|
6(4)
|
4(3)
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9(7)
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8(4)
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7(6)
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7(3)
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9(6)
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8(4)
|
- 国際心肺移植学会の統計によると、全世界で2003年6月末までに計66,353件の心臓移植(年間約3,500件)が行われています。最近ではアジア各国でも多くの心臓移植が行われるようになり、2003年末までに台湾で493件、韓国241件、タイで162件の心臓移植が行われました。
- 国内で心臓移植を受けた人は全て、移植直前の医学的状態の緊急度が非常に高いstatus 1の患者さんで、うち19人(70%)が補助人工心臓を装着されていました。それに対し、米国では年間約2,500件の心臓移植が行われていますが、status
1の患者さんはその75%で、補助人工心臓を装着されている患者さんは45%でした。
- 国内で心臓移植を受けた人の原疾患は、拡張型心筋症19人、拡張相肥大型心筋症4人、心筋炎後心筋症1人、薬剤性心筋症1人、虚血性心疾患1人、先天性心疾患1人でした。
- 国内で心臓移植を受けた人の移植までの待機期間は平均665日(29〜2,015日)、機械的補助期間は平均586日(20〜1,304日)で、米国のstatus
1の患者さんの待機期間56日と機械的補助期間50日に比較して極めて長いのが特徴です。
6.移植成績
- 国内で心臓移植を受けた27人のうち、2人の方が感染症で移植後4カ月目と4年目に死亡されました。2005年6月17日現在25人が生存し、全員が外来通院、16人が社会復帰(復職12人、主婦2人、復学2人)しています。生存率は1年96%、5年83%です。
- 海外で心臓移植を受けた61人のうち、48人が帰国(5人海外滞在)していますが、2005年6月17日現在8人が亡くなっています。生存率は1年96%、5年82%です。
- 国際心肺移植学会の統計によると、1997年から2000年までの3年間に心臓移植を受けた人の生存率は1年90%、3年74%でした(ISHLT
2004.8)。
- 心臓移植後現在生存中の人の中で最長生存例は25年11カ月です(Terasakiら、2004)。
7.費 用
- 大阪大学・国立循環器病センターの2施設では、拡張型心筋症・拡張相肥大型心筋症の2疾患で高度先進医療が認可され、移植手術費用(各々約264万円、298万円)と臓器搬送費(100〜400万円:搬送距離により異なる)が患者負担となりますが、移植前後の管理費(集中治療室の管理費、免疫抑制剤を含む)については社会保険から給付されます。拡張型心筋症・拡張相肥大型心筋症の2疾患以外、並びに、その2疾患でも高度先進医療として認可されていない5施設では、心臓移植術後の費用(移植術を含む)は患者負担もしくは施設負担になっています。早期に心臓移植が、心臓移植を必要とするすべての疾患に対して保険適用となることが期待されています。
- 海外渡航心臓移植に関わる費用は年々増加し、渡航前の状態、渡航先によって差がありますが、待機中・移植前後・外来の費用を含めて5,000〜7,000万円が必要です。最近では自費で費用を賄う人は減少し、ほとんどが募金または基金からの借入に頼っているのが現状です。
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