1.概 況
●腎臓は、生命維持の点から非常に重要な臓器であり、腎機能が何らかの病因で完全に廃絶し生命維持が困難となった病態が、末期腎不全です。末期腎不全の治療法には、透析療法(血液透析・腹膜透析)と腎移植の2種類があります。
●透析療法では、生体内に蓄積された尿毒素ならびに水分を体外に除去することは可能ですが、造血・骨代謝・血圧調整などに関連した内分泌作用を補うことは現在の医療技術では不可能です。このことが透析療法に伴う合併症発現の原因となり、透析患者の生活の質を低下させています。
●一方、腎移植は代替療法として理想的な治療法であり、少量の免疫抑制剤の継続的服用以外は、健常者と同様な生活が送れます。
●腎移植には、移植腎提供者(ドナー)により生体腎移植と献腎移植があり、献腎移植には、提供時のドナーの状態により心停止下腎移植と脳死下腎移植があります。生体腎移植は、健康な親族(*)から移植腎提供を受けるので、ドナーとしての適応可否は慎重に検討されます。また、提供される腎は1つであり、1人の末期腎不全患者が腎移植を受けられます。一方、献腎移植では、1人のドナーから2つの腎臓が提供されることになり、2人の末期腎不全患者が移植を受けることができます。わが国では、献腎移植が少ないために生体腎移植の占める割合が多いのが現状です。生体腎移植では、親子間が半数以上を占めますが、最近では夫婦間が多くなってきており、また、生体腎移植全体として血液型不適合移植が増加してきており、その移植成績もたいへん良好になってきております。
●腎移植が肝移植あるいは心移植と大きく異なる点は、脳死下での提供以外に心停止下で提供を受けても移植が可能なことで、実際に献腎移植のほとんどが心停止下腎移植です。さらに、提供を受けた後の臓器の保存時間は短いほど移植後の機能回復は良好ですが、腎臓の保存時間は肝臓や心臓に比較して長く、最大48時間までは移植が可能とされています。
●提供を受けた腎臓は、原則的に移植者(レシピエント)の左右いずれかの下腹部(腸骨窩)に収納され、腎動脈は内腸骨動脈あるいは外腸骨動脈へ、また腎動脈は外腸骨動脈へそれぞれ吻合され、さらに尿管は膀胱へ吻合します。レシピエント自身の腎臓は、腫瘍や水腎症などの異常がない限り摘出する必要はありません。
* 日本移植学会倫理指針では、生体腎ドナーは、親族(6親等内の血族、配偶者と3親等内の姻族)に限定することが定められています。
2.適 応
●基本的に、すべての末期腎不全の患者が腎移植の適応になり得ますが、ドナー、レシピエントともに、活動性の感染症や進行性の悪性腫瘍を合併している場合は適応外となります。しかし、ドナー側にC型肝炎が認められても、レシピエント側にもC型肝炎がある場合には移植が可能と考えられています。
3.年間移植件数(表1.)
●2007年の国内での腎臓移植件数を表1に示します。2007年の1年間で、生体腎移植は1,037例(84.7%)、献腎移植187例(15.3%)と、合計1,224例が施行されており、総数では過去最高となっています(日本移植学会、日本臨床腎移植学会、太田医学研究所統計報告より)。献腎移植は、心停止下163例(13.3%)、脳死下24例(1.3%)の提供でした。2006年の移植件数が生体腎939例、献腎197例、計1,136例であったのに比較すると、合計では88例多くなっていますが、特に生体腎の98例の増加によるものであります。献腎移植は10例減少し、特に心停止下提供での腎移植が19例減少しましたが、脳死下では9例の増加を認めております。
表1. 2007年の腎移植実施症例数

4.移植患者の性別・年齢(図1.2)
●腎移植レシピエントの性別は、生体腎では男性655例(63.2%)、女性372例(35.7%)、献腎移植では男性116例(62.0%)、女性70例(37.4%)と男性が多くなっています。
●腎移植レシピエントの平均年齢は、生体腎が42.8歳、献腎が47.0歳で、献腎のレシピエントは生体腎に比較して高齢となっており、この傾向はここ数年同じであります。生体腎移植と献腎移植をあわせると50歳代がもっとも多く25.48%を占めています。10歳未満への腎移植数は生体腎移植が25例、献腎移植が9例で、合計しても34例(2.8%)と非常に少ないのが現状です。
図1.2007年症例 レシピエントの性別

図2.2007年症例 レシピエントの年齢

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