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心臓のQ&A

移植について
心臓移植とはどんな治療ですか?

心臓移植 心臓移植とは、亡くなった他の方から心臓の提供を受け、その心臓を自分の心臓のかわりに植え込み、心不全から脱却し、延命とQOL(生活水準)の改善を計ることを目標とする治療法です。

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心臓移植の必要な病気にはどのようなものがありますか?
心臓移植でないと助からないような重症の心機能障害に陥る病気には、下記のように、重症の特発性心筋症、広範囲の心筋梗塞、高度な心筋障害を伴った心臓弁膜症、一部の先天性高度心奇形などがあります。
  1. 特発性心筋症
    1. 拡張型心筋症
    2. 拡張相肥大型心筋症
    3. 拘束型心筋症
  2. 虚血性心疾患(心筋梗塞)
  3. 心臓弁膜症
  4. 先天性心疾患(外科的に修復のできない場合)
  5. その他:心筋炎、サルコイドーシス、心臓腫瘍、薬剤性心筋障害など

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特発性心筋症とはどのような病気ですか?
特発性心筋症の原因はまだ解明されていませんが、心筋が徐々に変性して線維に置き代わり、力が出せなくなり、最後には体に充分な血液を送り出せなくなる病気です。時に、細菌やウイルスによる心筋炎や、遺伝的素因が原因の心筋症もあります。
  1. 初めから心臓がどんどん大きくなって、収縮する力がなくなってしまう拡張型心筋症
  2. 初めは心臓の筋肉は分厚くて症状がほとんどないが、後で徐々に心筋が薄くなってきて心臓が大きくなる肥大型心筋症拡張相
  3. 心臓の筋肉にはほとんど異常はありませんが、何らかの原因で心臓が拡張できない(心臓が膨らめないと、体から還ってきた血液は心臓に入れません)拘束型心筋症
の3つのタイプがあり、拡張型心筋症が最も多いタイプです。

悪くなった心臓 心臓のポンプ機能の低下にともない、心臓は拡大し、肺の水分量が増加してきて、息切れを生じるようになり、放置すれば死に到る病気です。

最近、内科的治療が目覚ましく発展し、様々な薬剤、例えば強心剤、利尿剤、カルシウム拮抗剤、βブロッカー、アンギオテンシンII阻害剤などの薬を服用することによって、症状が軽減し、寿命が長くなりました。特にβブロッカー、アンギオテンシンII阻害剤は良く効き、以前は拡張型心筋症と診断されただけで、平均余命が1年と言われていたのが、現在ではこういった薬剤が効けば、90%近くの人が10年くらい生きることができるようになってきました。従って、心筋症と診断されたから必ず心臓移植をすぐに受けなくては死んでしまうというものではありません。
しかし、これらの薬は、根本的に病気を治すものではなく、いずれはこれらの薬も効かなくなることがあります。また、これらの薬を使うとかえって心不全が強くなる人もいます。このような方が、心臓移植をうける必要があるのです。

また、最近、左心室の一部を切り取って大きくなった心臓を小さくすることで一時的に心臓の働きを良くしようとする手術、バチスタ手術が脚光を浴びています。確かに取り除く部分が特に動いていない患者さんで、しかも僧帽弁に逆流の見られる患者さんでは、心臓の働きが非常に良くなり、予後とともに、QOL(生活水準)も良くなることが報告されています。しかし、そのような患者さんでない方にバチスタ手術を行うと、却って心不全が強くなったり、早くに死んだりしてしまうこともあり、注意が必要です。また、一旦良くなっても、根本的に病気を治す手術ではありませんので、徐々に心不全が再発する場合があります。ドナー不足が極めて深刻な日本ではなくてはならない手術の1つではありますが、患者さんそれぞれに十分吟味して、手術を受けていただくかどうかを決めなければならないでしょう。

また、ここでは詳しいことは省略させていただきますが、最近補助人工心臓を装着して内科的治療を行うと心不全が改善されることがあることや、実験的に傷んだ心臓に骨髄や骨格筋から採取した細胞を移植すると心機能が改善するという再生医療が注目されてきていますが、将来的にはこれらの治療も心臓移植の代替治療となるかもしれません。

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どうなると心臓移植が必要となりますか?

まず内科的な治療としてβ遮断剤、ACE阻害剤を行い、次に強心剤の点滴や考えられる手術を試み、それでも心機能が改善しなければ補助人工心臓(LVAS)を併用した治療を行い、それでも心不全が改善しない場合に、心臓移植が行われるようになるでしょう。

ただ、現時点では、補助人工心臓装着以降の治療法は効果が未確定なので、強心剤の点滴や考えられる外科的治療法がなくなった場合に心臓移植を受ける必要があると判断されます。

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心臓移植を受けられない状態はあるのですか?

腎または肝機能障害があると、免疫抑制剤であるシクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸、イムランなどの使用によって悪化することがありますので、障害が強い時にはその回復を待ってから心臓移植を行います。心臓移植を行ってもこれらの機能の回復が見込まれないときには心臓移植はできません。
活動性の消化性潰瘍や重症糖尿病は、移植後の免疫抑制剤として服用するステロイドの使用によって悪化することが多いので、それらが鎮静化してから心臓移植を行います。
エイズ、結核、ウイルス性肝炎などの感染症、悪性腫瘍のある場合には心臓移植は行いません。

心不全が強くなると、左心房の圧が高くなって、肺高血圧になります。心不全の期間が短いと肺高血圧は移植直後に戻りますが、心不全の期間が長いとなかなか戻りません。心臓移植の際にドナーからいただく心臓は、心機能の良い心臓をいただくわけですが、ドナーになられる人は肺高血圧がないので、急に肺動脈圧が高くなると、移植された心臓は高い肺動脈圧に耐えられません。肺動脈圧を下げる薬剤が開発されて、心不全に陥ることは少なくなりましたが、心不全に陥った場合には、機械的補助人工心を一時的に装着したり、別の心臓を移植したりしなければならないことがあります。そのため、予めレシピエントの肺高血圧の程度を調べ、高い場合には心臓移植を受けていただけません。場合によっては、心臓と肺を同時に移植する心肺同時移植の適応となります。

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日本で心臓移植をうけるにはどのようにしたらいいですか?
心臓移植を受けるには、日本臓器移植ネットワーク(JOT)に移植希望者として登録しなければなりません。
登録までの簡単な流れを示します。
  • 臓器の機能が著しく低下して移植が必要だと主治医が判断した場合に、移植施設に紹介されます。
  • まず、その移植施設で移植の適応かどうかを判断し(時には適応を決めるために追加の検査を行います)、移植の適応と判定されれば、患者さんに移植について十分な説明をします。
  • 患者さんが移植に同意された場合には、中央の適応評価委員会に審査を依頼し、その委員会で移植の適応と判定された場合に、再度移植を受けるかどうかを説明します(インフォームドコンセント)。
  • 移植に同意された場合に、JOTに移植希望者として登録されます。
  • 患者さんが登録料3万円を振り込み、移植施設が登録申請用紙をJOTにFAXした時点で移植希望者として登録され、待機日数のカウントが始まります(どちらかが遅れた場合、遅れた方の手続きの日にちが登録日になりますのでご注意ください)。
※毎年登録の更新が行なわれ、更新料は5千円です。
※尚、二つ以上の臓器の移植を希望した場合には、臓器数分の登録料と更新料が必要です
登録の流れ図

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心臓移植の待機中の生活とはどのようなものですか?

脳死移植は、脳死に至った方から善意の臓器提供によって初めて成り立つ医療です。従って、臓器の提供があるまでは、病気の治療を受けながらの待機となります。自分に適したドナーが現れるまでの期間は、待っている患者さんの数や血液型、体格によってちがいます。どのくらい待たなければならないかは誰にもわかりません。患者さんの状態が非常に移植を急ぐ状態(緊急度1)にある場合は、優先的に心臓移植を受けることができます。逆に他のレシピエントの方が適していると判断された場合には、次のドナーを待たなければなりません。焦らずに待たなければなりませんが、その間にいろいろ勉強して心臓移植について十分に理解を深めることができると思います。

実際の提供時には、ドナーの血液型、体格、待機期間に基づいて心臓移植の候補者が選ばれます。もしあなたが心臓移植の候補者として選ばれた場合、病院に日本臓器移植ネットワークより連絡が入ります。そして、病院よりあなたが移植手術を受ける意思があるかの確認が行われます。脳死移植では一刻を争う迅速な行動が必要ですので、日本臓器移植ネットワークから連絡が入ってから1時間以内にYesかNoかの返事をしなくてはなりません。したがって、状態によって入院をして待機される方、自宅で待機される方、色々ケースはありますが、ご家族も含め待機中は、夜間・休日を含めて、常に連絡がとれるようにしておいてください。また、レシピエントに選択された場合、直ちに入院が出来るように必要物品をまとめておくと良いでしょう。移動のための交通機関もチェックしておいて下さい。

多くの場合、患者さんは自分にあったドナーが現れるまで、入院しながら適切な治療と看護を受けることになると思います。このように入院している場合でも、また自宅で療養している場合でも、規則正しい生活をしなければなりません。腎臓や、肝臓が悪くなるとか、胃や十二指腸潰瘍、全身性の感染症などにかかると心臓移植を受けられなくなります。暴飲暴食を慎み、十分に睡眠をとり、皮膚や口腔などを清潔に保つなど、健康管理に充分気を配らなければなりません。齲歯(虫歯)の治療も済ませておく必要があります。
本人だけでは、長期間、安定した健康管理を続けることができないことがありますので、家族の方にも全面的な協力をお願いすることになります。

検査をする ドナーが見つかるまでは、心臓移植を受けるにあたって問題ないかどうかを、定期的に検査(胸部レントゲン撮影、心電図、心エコー検査、血液検査など)します。ドナーは突然現れることになります。ドナーが見つかると、急に入院または転院することになります。いつでも入院できるよう、普段から心の準備が大切です。多くの場合、入院するとすぐに、いくつかの検査がありますので食事をとらずに入院します。

ウォーキング 心臓移植後なるべく早く活動的な生活ができるように、移植前からできる範囲で適度な運動をすることが重要になります。疲れを残したり、体がむくんでくるほど運動したりすると心不全が増悪しますので、かえってよくありません。運動の内容と量について主治医に具体的に、詳しく相談して指示を受けなければならないことは言うまでもありません。
心不全の程度にもよりますが、可能であれば適宜歩くようにします。しかし、息切れや、胸痛などの症状がでるようならば、歩くのをやめねばなりません。ベッド上安静の方でも、定期的に座位になったり、寝ながらでも簡単な脚の運動をしたりすることが移植後役に立ちます。脚や足首をまっすぐに伸ばしたり、曲げたりする運動や、足首を回転させる運動だけでもよいのです。このようなちょっとした運動でも、血行を良くし、筋力を高めます。

移植後は免疫抑制剤を飲むために、抵抗力がおちて感染症にかかりやすくなります。移植後長い間ベッドで安静にしていると、感染の危険性がさらに高まりますので、早期に離床するように移植前から心がけておくことが大切です。

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ドナーの方が現れたら、どのような手順で心臓移植が行われるのですか?

ドナーが現れネットワークよりレシピエントとして選択されると、病院に連絡が入ります。主治医に連絡をし、病状を確認します。その後、レシピエント、ご家族に病院より連絡をとり意思確認をします。
意思確認の完了後、外来通院中の患者様や地元で待機をされている患者様は、迅速に病院へ移動が出来るようにします。交通手段・時間、食事や内服薬についてはコーディネーターが連絡をとり説明をしますので、それに従ってください。
入院中の患者さんは、主治医の指示に従って手術の準備を行います。
せっかく提供があっても、心臓の状態によっては、移植手術に使用できない場合もあります。心臓が移植に適した状態であるかどうかは摘出時に判断しますが、最終的に移植施設に搬送された後の判定となることもあります。

手術 心臓移植の手術は全身麻酔下で行われます。手術時間は5~6時間かかります。(但し、2回目の手術の場合や、補助人工心臓を装着している患者さんの場合は10時間程度かかることもあります。)
手術の傷は胸の真ん中を喉仏の少し下から、みぞおちまで縦に切ります。人工心肺という器械を装着して全身の循環を維持しながら、レシピエントの心臓を、心房の一部を残して取り除きます。そしてドナーの心臓を左心房、右心房、大動脈、肺動脈の順に吻合します。最近では、心房ではなく、上・下大静脈を直接吻合する方法で行う施設も多くなっています。

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心臓移植後の入院治療はどのようなものですか?

ICU(集中治療室) 手術後はICU(集中治療室)に入ります。ICUに移って状態が落ち着けば、面会することが出来ます。
この時期は感染症などに注意が必要なので、風邪を引いている方の面会はお控えください。手術直後はたくさんのチューブやドレーン等につながれています。やがて、人工呼吸器のチューブが抜かれます。(人工呼吸器が外れた後は、大きく深呼吸をし、咳をして痰は出していきましょう。)

手術後状態が安定すれば、2日目以降には胃管が抜かれ、水分、流動食が開始になります。
寝たまま下肢を上げる、座るなどからリハビリが始まります。
腎機能の低下により人工透析を必要とする場合があります。
超急性拒絶反応に注意してください。予めドナーに対する抗体を持っている場合に起こります。急激な心不全により、心臓が動かず補助人工心臓などが必要になり、再移植をしなければ助かりません。

手術後3~5日目に集中治療室から移植病棟の個室に移ります。
直接お部屋へ入って面会頂けます。面会の際はお部屋の前の消毒液で手を消毒してマスクをして入ってください。ご家族以外の面会は禁止です。また、小さいお子様や風邪など感染症にかかっている可能性もある方は病棟内へは入っていただけません。(感染症を持ち込まないようにするためですのでご協力下さい。)
食事もお粥から、徐々に普通食になります。生もの(果物も含む)、グレープフルーツは禁止です。
立つこと、ベッドサイドでの排泄、歩行など徐々にリハビリを行っていきます。手術後3、4日もすれば病室の中を歩行することが出来ます。

点滴 7-14日目以降には一般病棟の大部屋に移動します。
ご家族の面会の制限はありませんが、お子様や感染症をお持ちの方は同様に面会をお控え下さい。ご家族以外の病室での面会は禁止です。面談室での面会を行ってください。
この頃になると病棟内を歩行して頂けます。病棟内のトイレを使用してください。
レントゲン検査など外出時は、マスクを着用してください。
手術後7日目に拒絶反応が無いか調べるため、心筋生検を行います。
その後、1ヶ月目までは1回/週の心筋生検があります。
免疫抑制剤の調整により心機能が安定し体力が回復したら、退院となります。

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