一般の方

移植ことば辞典

か行
獲得抗体
移植臓器などの異物に対してTリンパ球やBリンパ球により後天的に生じる特異性の高い抗体を獲得抗体といいます。樹状細胞やマクロファージは貪食した異物をT細胞に抗原提示して、提示した異物に対する獲得免疫を誘導します。獲得免疫が一度できればその異物に特異的なリンパ球が体内で長期間維持されるため、麻疹に対する抗体のように、2回目以降のその異物に対する免疫応答は迅速で強力です。
ガンマグロブリン
グロブリンは電気泳動によりα、β、γに分けられ、そのうちガンマグロブリンは抗体を含む分画で免疫グロブリンともいいます。ガンマグロブリン製剤には様々な抗原に対する抗体が含まれており、主としてIgGです。中和抗体としての作用や抑制性に働くFcγ受容体IIBの誘導作用などの免疫調整作用を持つため、大量投与して抗体関連拒絶反応の治療に用います。また重症の細菌感染症やウイルス感染症でも投与されます。
急性拒絶反応
移植後1週間~3ヶ月までに生じる拒絶反応で、発熱や倦怠感、尿量減少、移植腎腫大などの症状を認め、検査ではクレアチニン上昇、蛋白尿、血尿などが見られます。早く診断して治療することで治ることが多く、移植後早期は血液検査や尿検査を頻回に行い、早期に拒絶反応を発見するようにします。カラードプラ超音波検査なども診断に有用ですが、確定診断のためには移植腎の組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる病理検査が行われます。最近の免疫抑制薬の進歩により、典型的な症状を認める急性拒絶反応はまれになってきています。
拒絶反応
臓器移植で他人の臓器を移植する際に、ドナーとの組織適合性抗原の違いによりレシピエントの免疫が移植臓器を異物と認識するため、拒絶反応を生じます。拒絶反応は、細胞性免疫によるTリンパ球関連型拒絶反応と、液性免疫による抗体関連拒絶反応に大別されます。
虚血性心疾患
冠動脈の通過障害による心筋の虚血で起こる心疾患の総称で、狭心症、心筋梗塞、虚血性心不全、虚血性不整脈などとそれに派生する疾患群が含まれます。また、明らかな冠動脈疾患がないたこつぼ心筋症も虚血性心疾患に含まれます。心筋の虚血が重度の場合には心筋壊死に陥り致死的な心破裂、心不全等をきたします。日本では虚血性心疾患は心臓移植の原因疾患の中で二番目に多く、約10%程度です。
急性腎不全
急性腎不全(acute renal failure:ARF)は、腎機能が急速に悪化して生体内の水分、電解質、酸塩基平衡などの生体調節作用が障害された状態を示しますが、その定義や診断基準が統一されていませんでした。近年、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)という概念が提唱されるとともに、その診断基準と重症度分類が検討されてきました。日本腎臓学会『急性腎障害(AKI)診療ガイドライン2016』では、KDIGO ガイドラインによる AKI 診断基準と重症度分類 が推奨されています。
クレアチニン(Cr)
筋肉へのエネルギー供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物であり、腎糸球体で濾過された後、殆ど再吸収されず速やかに尿中に排出されます。体内で合成されるCr量は筋肉量に比例しますが、血清Cr濃度の測定は簡便かつ腎臓以外の影響を受けにくいため、血清Cr値は腎機能のスクリーニング検査や経過観察に用いられます。しかし、軽度の腎機能障害では上昇しないため、尿中Cr値と併せてクレアチニン・クリアランスを計算し腎機能を評価します。
クレアチニンクリアランス(CCr)
筋肉の新陳代謝により毎日一定量産生されるクレアチニンは、主に糸球体で濾過され、一部尿細管から分泌されることにより100%腎臓から排泄されます。CCrは血清と蓄尿のクレアチニン値を測定し、糸球体が1分間にクレアチニンや他の老廃物を含む血液を何mL濾過できるかを調べる検査、すなわち糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)を知る方法の一つです。小児や、成人でも体格が標準と異なる場合は体表面積で補正して評価します。前述の通り、クレアチニンの一部(10~15%)は尿細管から分泌されるため、クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量をやや過大評価する傾向があります。
血漿交換
血液は赤血球や白血球などの血球成分と血漿成分に分けられ、臓器移植で拒絶反応をおこす抗体は、血漿に含まれています。拒絶反応をおこす抗体の力を弱めるために種々の免疫抑制薬が使用されますが、この抗体を根本より除去する方法が血漿を入れ替える血漿交換です。血液型不適合臓器移植で抗A抗B抗体を除去する移植前処置として血漿交換がよく行われます。
血液型不適合移植
血液型抗原は赤血球表面だけでなく、移植臓器も含めて多くの細胞表面にあります。レシピエントの持たないA抗原やB抗原を持つ臓器が移植される組み合わせの場合を血液型不適合移植といいます(例:ドナーA型、レシピエントO型など)。無処置で移植するとすぐに抗血液型抗体による拒絶反応が起きるため、レシピエントの抗A抗体や抗B抗体を術前に減弱させる(減感作)治療を行って移植します。
献腎移植
献腎移植は、脳死後または心停止後に、生前に書面で本人の臓器提供の意思がある場合、もしくは本人の意思が確認できない場合でもご家族の承諾がある方から提供された腎臓を移植することであり、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークに登録されている移植施設を通じて登録申請した希望者の中から、腎移植のレシピエント選択基準(血液型、提供施設と移植施設の所在地、HLA型ミスマッチ数、待機期間などを考慮)により選ばれます。
血中尿素窒素(BUN)
蛋白の代謝産物のアンモニアが、主に肝(尿素サイクル)で代謝された終末代謝物が尿素です。尿素は体内で再度代謝されることはなく腎から排泄されます。測定では尿素中の窒素量(尿素1mol=60g中に尿素28g)である尿素窒素で表します。腎機能低下以外に蛋白の異化が亢進する病態(副腎皮質ステロイド薬の使用を含む)、蛋白摂取量の増加、消化管出血(消化管での尿素の産生と吸収)などで上昇する一方、妊娠、重症肝障害、組織蛋白の異化減少、蛋白摂取量の減少で低下します。
抗原
免疫反応で中心となって働くリンパ球や体内の抗体によって認識される分子すべてを抗原と呼びます。抗原にはヒトにとって全く違う種類である細菌やウイルスなどの異種抗原や、ヒトとヒト、ブタとブタなど同じ種類の動物間で遺伝的に異なってくる同種抗原があります。他に自分のものが自分の免疫反応を引き起こす自己免疫疾患の原因となる自己抗原などがあります。ヒトからヒトへの臓器移植ではヒト白血球抗原(HLA抗原)が、また血液型が違う間での臓器移植ではABO血液型抗原も拒絶反応で問題となります。
抗体
抗体は糖タンパク質で出来た免疫グロブリンとも呼ばれるもので、Bリンパ球によって産生されます。抗体は体内に侵入してきた病原体の抗原と結合して病原体の力をおさえ、白血球の一種である好中球やマクロファージにその病原体が捕まって食べられやすくします。Bリンパ球の表面に抗体が飛び出しており、抗原が侵入してこれに結合するとTリンパ球の助けをもらってBリンパ球が活性化、増殖し、抗体を分泌します。生体は体内に色々な抗体を持ったBリンパ球を備えることにより、種々の病原体などの侵入に対応することが出来るようになっています。
抗体関連拒絶反応
抗体関連拒絶反応は、抗HLA抗体や抗血液型抗体などによる拒絶反応です。ドナーに対する抗HLA抗体(ドナー特異的抗体:DSA)による抗体関連拒絶反応が、難治性で臓器廃絶につながりやすいため重要です。DSAは移植前から存在する既存抗体(Pre-formed DSA)と移植後新規に生じる抗体(de novo DSA)に大別されます。