移植ことば辞典

か行
獲得抗体
移植臓器などの異物に対してTリンパ球やBリンパ球により後天的に生じる特異性の高い抗体を獲得抗体といいます。樹状細胞やマクロファージは貪食した異物をT細胞に抗原提示して、提示した異物に対する獲得免疫を誘導します。獲得免疫が一度できればその異物に特異的なリンパ球が体内で長期間維持されるため、麻疹に対する抗体のように、2回目以降のその異物に対する免疫応答は迅速で強力です。
活性型ビタミンD
活性型ビタミンDはカルシウムの骨への吸着を促進する作用があり、不足すると骨粗鬆症につながります。食事で摂取したり皮膚で(日光にあたることにより)合成されたビタミンDは肝臓や腎臓で活性型ビタミンDとなります。慢性腎不全となり腎臓の働きが低下するとビタミンDの活性化が進まず、骨粗鬆症の原因となります。また活性型ビタミンDは副甲状腺ホルモンとも密接な関係があり、副甲状腺ホルモンが高値になった場合の治療として活性型ビタミンD製剤が投与される場合があります。
ガンマグロブリン
グロブリンは電気泳動によりα、β、γに分けられ、そのうちガンマグロブリンは抗体を含む分画で免疫グロブリンともいいます。ガンマグロブリン製剤には様々な抗原に対する抗体が含まれており、主としてIgGです。中和抗体としての作用や抑制性に働くFcγ受容体IIBの誘導作用などの免疫調整作用を持つため、大量投与して抗体関連拒絶反応の治療に用います。また重症の細菌感染症やウイルス感染症でも投与されます。
急性拒絶反応
移植後1週間~3ヶ月までに生じる拒絶反応で、発熱や倦怠感、尿量減少、移植腎腫大などの症状を認め、検査ではクレアチニン上昇、蛋白尿、血尿などが見られます。早く診断して治療することで治ることが多く、移植後早期は血液検査や尿検査を頻回に行い、早期に拒絶反応を発見するようにします。カラードプラ超音波検査なども診断に有用ですが、確定診断のためには移植腎の組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる病理検査が行われます。最近の免疫抑制薬の進歩により、典型的な症状を認める急性拒絶反応はまれになってきています。
拒絶反応
臓器移植で他人の臓器を移植する際に、ドナーとの組織適合性抗原の違いによりレシピエントの免疫が移植臓器を異物と認識するため、拒絶反応を生じます。拒絶反応は、細胞性免疫によるTリンパ球関連型拒絶反応と、液性免疫による抗体関連拒絶反応に大別されます。
虚血性心疾患
冠動脈の通過障害による心筋の虚血で起こる心疾患の総称で、狭心症、心筋梗塞、虚血性心不全、虚血性不整脈などとそれに派生する疾患群が含まれます。また、明らかな冠動脈疾患がないたこつぼ心筋症も虚血性心疾患に含まれます。心筋の虚血が重度の場合には心筋壊死に陥り致死的な心破裂、心不全等をきたします。日本では虚血性心疾患は心臓移植の原因疾患の中で二番目に多く、約10%程度です。
急性腎不全
急性腎不全(acute renal failure:ARF)は、腎機能が急速に悪化して生体内の水分、電解質、酸塩基平衡などの生体調節作用が障害された状態を示しますが、その定義や診断基準が統一されていませんでした。近年、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)という概念が提唱されるとともに、その診断基準と重症度分類が検討されてきました。日本腎臓学会『急性腎障害(AKI)診療ガイドライン2016』では、KDIGO ガイドラインによる AKI 診断基準と重症度分類 が推奨されています。
クレアチニン(Cr)
筋肉へのエネルギー供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物であり、腎糸球体で濾過された後、殆ど再吸収されず速やかに尿中に排出されます。体内で合成されるCr量は筋肉量に比例しますが、血清Cr濃度の測定は簡便かつ腎臓以外の影響を受けにくいため、血清Cr値は腎機能のスクリーニング検査や経過観察に用いられます。しかし、軽度の腎機能障害では上昇しないため、尿中Cr値と併せてクレアチニン・クリアランスを計算し腎機能を評価します。
クレアチニンクリアランス(CCr)
筋肉の新陳代謝により毎日一定量産生されるクレアチニンは、主に糸球体で濾過され、一部尿細管から分泌されることにより100%腎臓から排泄されます。CCrは血清と蓄尿のクレアチニン値を測定し、糸球体が1分間にクレアチニンや他の老廃物を含む血液を何mL濾過できるかを調べる検査、すなわち糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)を知る方法の一つです。小児や、成人でも体格が標準と異なる場合は体表面積で補正して評価します。前述の通り、クレアチニンの一部(10~15%)は尿細管から分泌されるため、クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量をやや過大評価する傾向があります。
血漿交換
血液は赤血球や白血球などの血球成分と血漿成分に分けられ、臓器移植で拒絶反応をおこす抗体は、血漿に含まれています。拒絶反応をおこす抗体の力を弱めるために種々の免疫抑制薬が使用されますが、この抗体を根本より除去する方法が血漿を入れ替える血漿交換です。血液型不適合臓器移植で抗A抗B抗体を除去する移植前処置として血漿交換がよく行われます。
血糖降下薬
糖尿病の治療には食事・運動療法が重要ですが、血糖を下げるための様々な薬があります。これらは膵臓に作用してインスリンの分泌を促す薬や、肝臓や筋肉、脂肪組織に作用してインスリンの効きを良くする薬、腸や腎臓に作用して糖の吸収・排泄を調節する薬、それらの配合薬に分けられます。1日3回飲むものから1週間に1回でよいものなど多くの種類があります。低血糖や乳酸アシドーシスなど重大な副作用もあるので主治医の指導に従って使用することが重要です。
血液型不適合移植
血液型抗原は赤血球表面だけでなく、移植臓器も含めて多くの細胞表面にあります。レシピエントの持たないA抗原やB抗原を持つ臓器が移植される組み合わせの場合を血液型不適合移植といいます(例:ドナーA型、レシピエントO型など)。無処置で移植するとすぐに抗血液型抗体による拒絶反応が起きるため、レシピエントの抗A抗体や抗B抗体を術前に減弱させる(減感作)治療を行って移植します。
献腎移植
献腎移植は、脳死後または心停止後に、生前に書面で本人の臓器提供の意思がある場合、もしくは本人の意思が確認できない場合でもご家族の承諾がある方から提供された腎臓を移植することであり、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークに登録されている移植施設を通じて登録申請した希望者の中から、腎移植のレシピエント選択基準(血液型、提供施設と移植施設の所在地、HLA型ミスマッチ数、待機期間などを考慮)により選ばれます。
血中尿素窒素(BUN)
蛋白の代謝産物のアンモニアが、主に肝(尿素サイクル)で代謝された終末代謝物が尿素です。尿素は体内で再度代謝されることはなく腎から排泄されます。測定では尿素中の窒素量(尿素1mol=60g中に尿素28g)である尿素窒素で表します。腎機能低下以外に蛋白の異化が亢進する病態(副腎皮質ステロイド薬の使用を含む)、蛋白摂取量の増加、消化管出血(消化管での尿素の産生と吸収)などで上昇する一方、妊娠、重症肝障害、組織蛋白の異化減少、蛋白摂取量の減少で低下します。
降圧薬
血圧を下げる薬のこと。降圧薬は血管を広げたり、心臓の収縮力を抑えたり、血管内の水分を減少させるなど様々な作用機序のものがあり、血管への負担を減らし、血圧を下げます。高血圧症になると動脈硬化になりやすくなり、その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の引き金になるため、生活習慣の改善や降圧薬により血圧を下げる必要があります。
高カリウム血症
高カリウム血症とは血中カリウム濃度が高値となる電解質異常症です。高カリウム血症の症状は心臓や筋肉に認められ、不整脈(時に致死的)、四肢の痺れ、筋力の低下、吐き気などがあります。その原因は、本来細胞内に多いカリウムが血液中に流出する場合や、薬剤や腎機能の低下で尿からの体外排泄が低下する場合に起こります。グルコース・インスリン療法や利尿剤投与などで対処しますが、確実に効果を急ぐ場合には血液透析を必要とします。
カリウムの基準範囲:3.6~4.8mmol/L
高カルシウム血症
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が非常に高い状態をいいます。副甲状腺機能亢進、食事(カルシウムやビタミンDの過剰摂取)、がん、骨に影響を及ぼす病気、運動不足(長期臥床)で発生します。軽度の場合は無症状ですが、徐々に倦怠感、疲労感、食欲不振がおき、さらに高度になると筋力低下、口渇、多飲、多尿、悪心、嘔吐が出現し、放置すると錯乱、昏睡に陥り、死に至ることもあります。血液検査で発見できます。原疾患に対する治療が前提ですが、水分の摂取、カルシウム排泄促進を促す利尿薬、骨からのカルシウム放出を遅らせる薬が使用されます。
カルシウムの基準範囲:8.8~10.1mg/dL
高血圧
血圧の高い状態が続く病気です。収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上の状態をいいます。家庭で測定した血圧では、それぞれ135mmHg、85mmHg以上を高血圧としています。血圧が高くても症状が現れないことが多く、放置すると血管が傷つき、硬く狭くなり(動脈硬化)、脳卒中、心臓病、腎臓病などの重大な病気を引き起こします。減塩(1日6g未満)、運動、肥満是正などの生活習慣を改善する治療法が基本になり、喫煙は禁止です。それでも難しい場合には、薬物による治療を行います。
抗原
免疫反応で中心となって働くリンパ球や体内の抗体によって認識される分子すべてを抗原と呼びます。抗原にはヒトにとって全く違う種類である細菌やウイルスなどの異種抗原や、ヒトとヒト、ブタとブタなど同じ種類の動物間で遺伝的に異なってくる同種抗原があります。他に自分のものが自分の免疫反応を引き起こす自己免疫疾患の原因となる自己抗原などがあります。ヒトからヒトへの臓器移植ではヒト白血球抗原(HLA抗原)が、また血液型が違う間での臓器移植ではABO血液型抗原も拒絶反応で問題となります。
抗体
抗体は糖タンパク質で出来た免疫グロブリンとも呼ばれるもので、Bリンパ球によって産生されます。抗体は体内に侵入してきた病原体の抗原と結合して病原体の力をおさえ、白血球の一種である好中球やマクロファージにその病原体が捕まって食べられやすくします。Bリンパ球の表面に抗体が飛び出しており、抗原が侵入してこれに結合するとTリンパ球の助けをもらってBリンパ球が活性化、増殖し、抗体を分泌します。生体は体内に色々な抗体を持ったBリンパ球を備えることにより、種々の病原体などの侵入に対応することが出来るようになっています。
抗体関連拒絶反応
抗体関連拒絶反応は、抗HLA抗体や抗血液型抗体などによる拒絶反応です。ドナーに対する抗HLA抗体(ドナー特異的抗体:DSA)による抗体関連拒絶反応が、難治性で臓器廃絶につながりやすいため重要です。DSAは移植前から存在する既存抗体(Pre-formed DSA)と移植後新規に生じる抗体(de novo DSA)に大別されます。
高ナトリウム血症
ナトリウム(Na)は塩分などとして経口や輸液により体に入り、尿や汗などで排出されますが、血液中のNa濃度は腎臓の働きにより135~145mEq/lに保たれています。何らかの原因により水の調節機能が正常に働かず、血中のNa濃度が上昇して145mEq/lを超えると高Na血症になります。症状として口渇、血圧上昇と浮腫があります。進行すると、錯乱、神経筋の興奮、痙攣、昏睡になり、死に至ることもあります。治療としては経口水分補給を行いますが、口から飲めない場合は点滴静注を行います。体液が過剰の場合は、Na排出を促進する利尿薬を使用することもあります。
高尿酸血症
血中尿酸濃度が7mg/dLを超える状態のことです。核酸の合成に必要なプリン体の産生が過剰、もしくはその排泄が低下していることが原因です。高尿酸血症の状態が長期に続くと、尿酸がさまざまな関節に沈着し、急性関節炎(痛風)を引き起こします。高尿酸血症・痛風に対する生活指導には、運動の推奨、食事療法、飲酒制限などが含まれます。食事療法としては、適正なエネルギー摂取、プリン体・果糖の過剰摂取制限、十分量の飲水が勧められます。
高リン血症
血清リン(PO4)濃度(正常:2.7~4.6mg/dl)が正常を超えて高くなること。食事で取るタンパク質などに含まれるリンは、主に腎臓から排泄されますが、過剰なPO4の経口投与や腎機能不全、副甲状腺機能低下症のためにPO4の排泄量が低下して起きることが多いです。ほとんどは無症状で、低カルシウム血症が一緒に起きますが、高カルシウム血症と高リン血症が同時に起きると血管などにカルシウムが沈着し、動脈硬化を引き起こします。治療としてリン摂取制限、および炭酸カルシウムなどのリン吸着薬の投与を行います。
骨粗しょう症
骨密度が低下したり、骨質が劣化することで骨の強度が低下し、骨折しやすくなる状態をさします。老化、閉経に伴う原発性骨粗鬆症(ほとんどの場合)と、副甲状腺機能亢進症、ステロイドなどの薬剤性、栄養障害、病気や怪我などで運動ができない状態などによる続発性骨粗鬆症とに分類できます。身長の低下、背中や腰が曲がってきて痛い、などの症状がみられます。骨吸収を抑制する薬剤、骨形成を促進する薬剤、カルシウム製剤などが治療に使われます。
骨代謝異常
慢性腎臓病では、ビタミンDの働きが障害され、食物中のカルシウムが体内に吸収されず、血中カルシウム濃度は低下します。同時にリンの尿への排泄が低下するため、血液中のリン濃度が上昇します。このような状態では、カルシウムとリンの血中濃度の異常を調節するため、副甲状腺ホルモン量が増加します。副甲状腺ホルモンは、骨から血中へカルシウムを移動させるため、ホルモンが増え続けると骨のカルシウムが減少し、骨折しやすくなります。