移植用語辞典

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バシリキシマブ
バシリキシマブはヒトT細胞のIL-2受容体のα鎖(CD25)に対するマウス・ヒトキメラ型のモノクローナル抗体で、IgG1サブクラスに属す。バシリキシマブは活性化されたT細胞表面のIL-2受容体にIL-2と競合的に結合して、受容体へのシグナル伝達を阻害し、B細胞の増殖と活性化を阻害する。その結果、抗体産生がされなくなり、移植臓器への免疫反応が防止される。腎機能が障害されているために、移植後導入免疫として高用量のカルシニューリン(calcineurin)阻害薬が使用しづらい場合にインダクション(induction)治療の目的で使用されている。
バルガンシクロビル
バルガンシクロビルは、サイトメガロウイルスに対する抗ウイルス薬の1つである。ガンシクロビルを化学的に変え(L-バリンでエステル化)、生体内に入ってから活性化されるプロドラッグとしたものである。腸管および肝臓のエステラーゼにより速やかに加水分解されてガンシクロビルに変換され、サイトメガロウイルス感染細胞内でプロテインキナーゼ(UL97)にリン酸化されてガンシクロビル一リン酸になり、さらにリン酸化されて活性型のガンシクロビル三リン酸になる。ウイルスDNAポリメラーゼがDNAを合成する際にデオキシグアノシン三リン酸の働きを邪魔して、DNA合成を停止させる。この作用によりサイトメガロウイルスの治療に使用する。
副腎皮質ステロイド薬
副腎皮質で作られるステロイドホルモンには、アルドステロン(電解質コルチコイド)、コルチゾール(グルココルチコイド)、アンドロゲン(男性ホルモン)が含まれる。治療薬として用いられる副腎皮質ステロイドは、多くの場合は糖質コルチコイドを指す。抗炎症薬あるいは免疫抑制薬として用いられる。作用時間によって、短時間作用型、中間型、長時間作用型がある。免疫抑制の機序は多岐にわたっている。ステロイドは、細胞膜を通過しグルココチルチコイドレセプター(GR)へ結合した後、核膜を通過し、核内でGRE(glucocorticoid responsive element)と結合し、リポコルチンなどの調節タンパクを合成する。ステロイドとGRとの複合体はAP-1(c-Junのホモ二量体あるいはc-Fosとのヘテロ二量体)やNF-κBと相互作用することでこれらの遺伝子転写を抑制する。
ヘルパーTリンパ球(Th)
T細胞のうち獲得免疫を促進する役割を担う。ヘルパーT細胞はCD4をもつナイーブヘルパーT細胞(Th0)がIL-12の刺激を受けてTh1に、IL-4の刺激を受けてTh2に分化する。Th1はIFN-γ、IL-2、TNF−α、IL−12などを分泌し、IL-2は細胞障害性T細胞を活性化し細胞性免疫を賦活させる。Th2はIL-4を分泌してB細胞を活性化し形質細胞に分化させ、液性免疫を賦活させる。また、Th1が出すIFN-γはTh2を抑制し、逆にTh2が出すIL-10はTh1を抑制する。