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心移植

 

 

我が国における心臓移植の現状


 心臓移植はこれまでの内科的・外科的治療では救うことのできない重症の心不全の患者さんを治療する方法で、すでに欧米では普及し、欧米では年に4000名近い方が心臓移植を受けておられます。日本では1997年10月にようやく「臓器移植に関する法律」が施行され、その1年4カ月後の1999年2月28日に日本で初めての心臓移植が実施されました。それ以後、臓器提供者数は増えましたが、依然として臓器提供が少なく、これまで27名の心臓移植しか行われていません。現在、日本では心臓移植を必要とする患者さんが年間300〜500名いると言われ、その方たちの半分は1年以内に死亡しているのが現状です。

 

日本臓器移植ネットワーク登録状況

1999年に心臓移植が実施されて以来、日本臓器移植ネットワークに心臓移植希望患者として登録された患者さんは漸増し(図1)、2005年3月末までに204名が日本臓器移植日本臓器移植ネットワークに登録されました。しかし、それまでに心臓移植を我が国で受けられたのは27名に過ぎず、待ちきれずに21名が海外で心臓移植を受けましたが、70名がすでに亡くなっています(図1)。心臓移植を受けた27名の内19名(70%)の方は人工心臓が装着されており、自分の心臓だけではすでに生きていけず、早くに心臓移植を受けないと死んでしまう状態です。
また体格の小さな小児では、現行法では15歳未満の脳死臓器提供が認められていないため、我が国で心臓移植を受けることができません。そのため、海外で心臓移植に希望をつないでいるのが現状です。また、国内のドナーの方が数少ないので、国内で待ちきれず、海外へ渡る成人も決して少なくありません。表1のように、法施行後の8年半の間に、国内では27人、海外渡航(アメリカ、ドイツ)では64人(登録患者22人を含む)が心臓移植を受けました。下に年間の移植数を示します。カッコ内は18歳未満の小児心臓移植の数です。法施行前からの海外渡航心臓移植した患者さんの数の推移を図2に示しました。

1997.10〜12 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 〜2005.8.11
国内 0 0 3 3(1) 6(1) 5 0 4 5
海外 3(1) 6(4) 4(3) 9(7) 8(4) 7(6) 7(3) 9(6) 11(7)
表1 法施行後、心臓移植を受けた日本人の推移

図1
図2

我が国で行われた心臓移植の現状(表2)

2005年3月末までに27名の心臓移植が行われました。男性20名、女性7名で、移植した時の年齢は15歳未満2名、15歳以上25名、平均35歳でした。心臓移植を必要とした原疾患は拡張型心筋症19名、拡張相肥大型心筋症4名、心筋炎後心筋症1名、薬剤性心筋症1名、虚血性心筋症1名、先天性心疾患(単心室)1名で、19名が移植前に補助人工心臓を装着されていました。13名が我が国で開発された体外式の国循型補助人工心臓で、6名が米国で開発された埋込型補助人工心臓(Novacor型2名、HeartMate-VE型2名、HeartMate-IP型2名)でした。待機期間は非常に長く29日から2015日(平均665日)で、2年以上待機されていた方が12名います。補助人工心臓を装着していた期間は20日から1304日(平均586日)で、2年以上装着していた方は6名で、米国で人工心臓を装着した患者が平均50日で心臓移植を受けられるのと比較すると、とても長いことが特徴です。

心臓移植を受けたあとには拒絶反応を予防するために、一生免疫抑制剤等の薬を服用しなければなりません。現在は、表1に示しましたように、3つの免疫抑制剤(シクロスポリンかタクロリムス、アザチオプリンかミコフェノールモフェティル、とプレドニゾロン)が使用されています。術後に腎機能障害をきたした8名と液性拒絶反応を起こした2名で、胸腺細胞に対するグロブリン製剤が用いられましたが、副作用はみられませんでした。肝機能異常、拒絶反応、血小板減少等の理由で、アザチオプリンの3名がミコフェノール酸モフェティルに、シクロスポリンの5名がタクロリムスに変更されました。治療を必要とした拒絶反応は6名にみられました。細胞性拒絶反応(いわゆる急性拒絶反応)はその5名みられ、1名はメチルプレドニゾロンの静脈内投与や経口投与(100mg 3日間)で治療できました。液性拒絶反応は2名に、血漿交換2回、静注メチルプレドニゾロン投与(1g 3日間)、抗胸腺細胞グロブリン製剤投与、その他の薬剤投与の併用で治療できました。

免疫抑制剤を服用すると感染症にかかりやすくなりますが、治療を必要とした感染症は8名に見られ、5名に肺炎を発症し、残念ながらそれが原因で2名の方が亡くなりました。他の方は、抗生剤の静脈内投与で治療できました。

残念ながら2名の方が移植後4ヶ月目と4年目にお亡くなりになりましたが、図3に示しますように、国内で移植された方の生存率は、海外渡航移植された方や、欧米での成績と遜色ありません。その他の27名の患者さんは現在では強心剤も補助人工心臓も必要なくなり、全員退院され、16名が職場復帰も果たされています。ひとえにドナーの方とその御家族の尊い意思によるものですが、心臓移植を行うことでこれまで治療できなかった重症の心不全の患者さんを救命できるようになりました。心臓移植を必要としている患者さんの数に比較すると、臓器提供される方の数はまだまだ少ないですが、日本でも心臓移植が定着して多くの患者さんが助かることを期待しています。

図3

最後に、2005年3月末まで35名のドナーの方からの心臓の提供のお申し出がありましたが、8名の方は残念ながら医学的な理由で心臓移植のドナーとして適しませんでしたので、心臓移植を断念いたしました。この場をお借りして、そのドナー及び御家族にも感謝の意を表明させていただきたいと思います。

 

表2 心臓移植を受けられた方の概要
(2005年7月末現在)



症例数 27例
男:女 20例:7例
年齢 8-60才(15歳未満2例)
原疾患 拡張型心筋症 15例、肥大型心筋症拡張相 4例
虚血性心筋症 1例
心筋炎後心筋症 1例、薬剤性心筋症 1例
単心室・肺動脈狭窄・共通房室弁置換術後 1例
Marfan症候群兼拡張型心筋症 1例
待機中のStatus 全例status 1
補助人工心臓装着 Novacor型 2例、Heart Mate-IP型 2例、
Heart Mate-VE型 2例、国循型 13例、
人工心臓装着期間 20-1304日(平均586日:1年以上13例、2年以上6例)
待機期間 29-2015日(平均665日:1年以上21例、2年以上12例)
実施施設 大阪大学9例、国立循環器病センター13例、東京女子医科大学2例、
埼玉医科大学、九州大学、東北大学各1例

維持免疫抑制療法 18例 プレドニン, シクロスポリン, ミコフェノール酸モフェティル
1例 シクロスポリン, ミコフェノール酸モフェティル
8例 プレドニン, タクロリムス, ミコフェノール酸モフェティル

観察
死亡 2例 (4ヶ月 誤嚥性肺炎、4年 感染症)
生存 25例 (全員 外来、 16例社会復帰)

拒絶反応
 細胞性拒絶 5例 ステロイドパルス(経口又は静脈投与)で治癒
 液性拒絶 2例 血漿交換、ステロイドパルス、抗胸腺細胞抗体で治癒
感染症
 肺炎 5例(死亡 2例)
 サイトメガロウイルス 胃炎 2例、肝炎 1例


     

 

心臓移植に関する関連リンク

心臓移植に関する、さらに詳細の資料を御覧になりたい方は、以下の関係リンクを御覧下さい。

学会などのデータバンク

1. (社)日本臓器移植ネットワーク
提供数や待機患者数などデータのページ。
http://www.jotnw.or.jp/

2. 国際心肺移植学会心臓移植・肺移植統計
http://www.ishlt.org/

3. 日本循環器学会「心臓移植委員会」
日本循環器学会の「心臓移植委員会」による、心移植の対象と適応、手続き、実際、データなどの情報ページ。
http://plaza.umin.ac.jp/~hearttp/index.html

4. トランスプランテーションコミュニケーション
臓器移植に関する様々なデータを紹介
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/index.html

 

 

心臓移植実施施設:


1. 国立循環器病センター
組織、事業概要などの紹介とともに、循環器病情報サービス、臓器提供・臓器移植に関するページあり。
http://www.ncvc.go.jp/

知っておきたい循環器病あれこれに、「心臓移植のあらまし」が掲載。
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamph/pamph_09/panfu09_01.html

2. 大阪大学医学部附属病院心臓血管外科
心臓移植のあらまし、患者さんに読んでいただく心臓移植のガイドブックを紹介。
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg1/www/transplant/h-tx.html
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg1/www/transplant/h-tx-manu.html

3. 東京女子医科大学病院心臓血管外科
組織、事業概要などの紹介
http://www.twmu.ac.jp/TWMU/Medicine/RinshoKouza/

4. 埼玉医科大学心臓血管外科
心臓移植・補助人工心臓・両心室ペーシングのあらまし、患者さんに読んでいただく心臓移植のガイドブックを紹介。
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/division_info/14_transplant.html
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/division_info/14_treatment1.html
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/division_info/14_treatment2.html

5. 九州大学心臓血管外科
組織、事業概要などの紹介。
http://cs1.med.kyushu-u.ac.jp/

6. 東北大学心臓血管外科
組織、事業概要などの紹介。
http://www.cts.med.tohoku.ac.jp/index.html

7. 東京大学胸部外科
組織、事業概要などの紹介。
http://ctstokyo.umin.ne.jp/

 

 

心臓移植支援患者団体:


1. 日本移植者協議会
http://www.jtr.ne.jp/

2. 全国心臓病の子供を守る会
http://www1.normanet.ne.jp/~ww100078/

3. ニューハートクラブ
英ヘアフィールド病院で心臓移植を受けた日本人とその家族、主治医を中心に結成された会。
http://www.ai.wakwak.com/~newheartclub/index.html

4. 心臓病者友の会
http://www1.normanet.ne.jp/~ww100079/

5. 心臓移植希望者・支援団体
心臓移植希望者の支援ページ(海外渡航心臓移植希望者・支援団体の紹介)
http://www.246.ne.jp/~snakajii/batista/kanjashien0.html



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