腎移植臨床登録集計報告(2002)-T
2001年実施症例の集計報告
日本移植学会雑誌 『移 植』 (Vol.37_No.2)より
I.はじめに
腎移植関係者各位のご協力を得えて,2001年にわが国で実施された腎移植の総数を集計することができた。その結果を全体集計,各ブロック別集計,各施設別集計の3つに分けて,それぞれまとめたので報告したい。
2. わが国の腎移植全体集計
2001年の1年間に,わが国で実施された腎移植の総件数は表1に示すように全体で702件であり,119施設において行われている。実施した施設数は2000年の調査時1)
より22施設減少している。移植された腎の内訳は,生体腎551件,献腎135件,脳死体腎16件などとなる。なお,これら702名のレシピエント全体の平均年齢は37.4歳であり,生体腎は34.5歳,献腎・脳死体腎を合わせた群は47.7歳となった。なお,性別は全体でみると男性が64.1%と多数を占め,これを生体腎と献腎・脳死体腎に分けてみても前者が62.6%,後者が69.5%と男性が多数であった(表2)。

3. 地域別にみた腎移植の分布
表3は各ブロック別に移植数を提示したものである。北海道は全体が1ブロックで移植数は3例の献腎を含む38件であった。また東北ブロックでは全体で32件であり,この中には2例の献腎と1例の脳死体腎が含まれている。これに対して関東甲信越は1都9県と地域が広くまた人口も多いため,腎移植の総数は脳死体腎9を含む63件の献腎に206件の生体腎移植例を加え,総計269件となっている。この中で最も症例の多いのは東京都で,献腎35件を含む184件の腎移植が行われており,都道府県の中では最も多かった。ただし,山梨県で実施された症例は生体腎移植がわずか1例と極めて少なかった。また,東海北陸ブロックでは7県で生体腎74件,献腎46件と合わせて120腎が移植されており,愛知県が献腎21件を含む71件で最も多く,静岡県の15件がこれに次いでいる。一方,富山県は献腎7件を含む10件と症例数は増加したが,これは同じブロック内ないしは他のブロックから提供されたものである。近畿ブロックでは脳死体腎4件を含む15の献腎と99件の生体腎移植を合わせて114件の腎移植が行われており,症例数は東海北陸ブロックに次いだ。ただし,滋賀県のように昨年1例の腎移植も実施されていない県もみられる。中国,四国では85件の生体腎移植に10件の献腎移植を加えた95件の症例があるが,中国地域では広島県と岡山県が有力で他の県はなお少数例しか行われていない。一方,四国では愛媛県が46件と圧倒的に症例が多く,高知の8件がこれに次いでいる。九州ブロックと沖縄サブブロックの合計は脳死体腎2件を含む献腎11件と合わせて34件であり,福岡県を除く他の県はすべて4件以下である。なお,佐賀,大分,鹿児島の3県では2001年に腎移植は1件も行われていない。

4. 症例の施設別分布
2001年実施症例の施設別の分布を表4に示したが,東京女子医科大学の症例が生体腎96件,献腎22件で合計118件と最も多く,これに次いで名古屋第2日赤病院(41件),宇和島病院(35件),東邦大学(32件),京都府立医科大学(25件),市立札幌病院(20件)などが年間20件以上の腎移植を行っている。また,10症例以上実施した施設は大阪大学(17件)虎の門病院(16件),清瀬小児病院(15件),新潟大学(13件)などであり,その他社保中京,大阪府立,兵庫県立西宮がそれぞれ10件の移植を行っている。

5. 地域較差と問題点
2001年の献腎移植件数は,総計151件と昨年の146件を5件上廻った。また,この151件の中には脳死体よりの提供が16件あり全提供腎の10%を超えた。これは望ましいことのように考えられるかもしれないが,実際には国で指定した(1)大学附属病院,(2)日本救急医学会指定施設,(3)日本脳神経外科学会専門医訓練施設,(4)日本救急医学会指導医訓練施設など,いわゆる4類系病院以外の施設からの腎提供が減少してしまったことの反映とも考えられるので今後注目しなければならない。ここ5年間の移植件数の動きを図1に示しておく。献腎移植と生体腎移植の比率については,全国的にみると27.5%であるが,各ブロックの数値を出してみると北海道7.9%,東北9.4%,関東甲信越23.4%,東海・北陸39.0%,近畿13.2%,中国・四国10.5%,九州・沖縄32.4%となる。この割合の高いほど献腎移植が多く行われた地域ということになるが,比較の対象になる生体腎が極めて少数であれば割合が上るので,これだけでは正しい評価はできない。一方,ドナーアクションをはじめとする地域の献腎運動推進の成果は,全国の献腎数の増加により日本全体としての評価はできるが,このデータでは各都道府県での努力を評価することができない。献腎運動を推進するためには東京都をはじめ,それぞれの府,県における努力とその成果を知ることが大切であり,そのためには各府,県において「提供された腎」の実数を知ることが必須である。これに関してはネットワークが当然把握しているデータであり,ドナーアクションを推進するためにも毎年1月末までには前年の成果を公表すべきものと考えている。もう1つの問題は提供を受けた施設の片寄りである。2001年の1年間東京女子医科大学で行われた献腎移植は22例と提供された151腎の14.6%に達してしまった。これは,筆者らが早期から献腎移植の登録キャンペーンを行ったために早く申込んだ患者が多く,これが「組織適合性が同じなら,申込の早い順に」となっていた条件により移植を受ける機会が増えたものと推測している。2002年からポイント制になり,待ち時間はその要素の1つとして組み込まれることになった。今回のレシピエント選択基準の変更により,提供された腎の大部分はその腎を提供した都道府県で移植されることになる。これまで他県からの腎に依存していた県は厳しい状況に置かれることになろう。自助努力が強く問われるところである。

6. おわりに
今世紀最初の腎移植の総数は,前世紀最後の年よりも生体腎は49件減,献腎は5件増となった。この献腎の増加を「上昇に転じた」とみるか「揺れ」とみるかは2002年の症例数にかかっていると言えよう。是非,前者となるよう努力しなければならない。
報告を終えるにあたり,本統計についてこれまでと同様絶大なるご協力をいただいた東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻大橋靖雄教授および樋之津史郎助手に深謝するとともに,これからも引き続き腎移植関係者各位のご理解とご協力を切にお願いする次第である。なお,本研究は厚生労働省厚生科学研究費補助金「ヒトゲノム・再生医療等研究事業」ならびに日本心臓血圧振興会・新医療技術研究会の事業により行われた。
文責:
日本腎移植臨床研究会,日本移植学会,腎移植臨床登録委員会委員長
太田 和夫
東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 川戸美由紀
文 献
1) 日本腎移植臨床研究会/日本移植学会・腎移植臨床登録集計報告(2000)-I
2000年実施症例の集計報告-(1). 移植2001; 36: 87-90