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小腸移植

 

 

  1. 概況

    ○短腸症候群や機能傷害による腸管不全患者に対し,小腸移植が行われます。

    ○小腸移植には,脳死体ドナー,及び生体ドナーからの臓器を用いる場合があります。

    ○摘出してから移植までの保存時間は12時間が限界とされます。

     

  2. 背景

    ○人が経口摂取により生命を維持するのに必要な小腸は、小児では30cm、成人では50cm以上が必要とされています。これらより短い場合、これのみでは十分な消化吸収を果たし得ず、栄養障害、発育障害により長期生存は困難であります。他に広範な粘膜病変や蠕動不全、重症の消化吸収障害が存在すると同じく経口摂取のみでの生存は不可能です。

    ○これらの腸管不全患者は静脈栄養により長期生存が可能となりましたが、通常の食生活を享受しえないばかりか、長期の静脈栄養の実施はカテーテル敗血症の発生や重篤な肝障害の危険性を増し,また静脈ルートの血管確保が困難となり、TPNの継続が不可能となります。

     

  3. 適応

    ○可能な限りの内科的及び外科的治療にも拘らず静脈栄養から離脱出来ない不可逆性小腸不全患者であり,1)大血管系の血栓症などのために静脈栄養カテーテルの維持が困難になりつつある者、または困難な者,2)重篤なカテーテル留置に伴う敗血症を頻回に繰返す者,或いは3)血清ビリルビン値高値持続と肝臓障害が進行しつつある者です。

    ○具体的な疾患は以下の通りです。

    (1)短腸症候群

    ・中腸軸捻転
    ・小腸閉鎖症
    ・壊死性腸炎
    ・腹壁破裂
    ・上腸間膜動静脈血栓症
    ・クローン病
    ・外傷
    ・デスモイド腫瘍
    ・腸癒着症
    ・その他

    (2)機能的不可逆性小腸不全

    ・特発性慢性偽小腸閉塞症
    ・ヒルシュスプルング病
    ・Microvillus inclusion病
    ・その他

    ○年齢は原則として60才以下が望ましいとされています。

    ○伝染性の活動性の感染症,悪性腫瘍,精神社会生活上の重要な障害,アルコールや薬物依存症,理解と協力が得られない,他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する場合は除外されます。

     

  4. 移植患者数

    ○小腸移植の実施数は1999年10月に国際小腸移植シンポジウムで発表されたものが最新のデータで,全世界において43施設で443人の患者に対し471グラフトの小腸移植が行われています。

    ○15人が生体ドナーより、残る428人は脳死体ドナーよりグラフトを受けています。

    ○小腸単独移植:213グラフト、小腸/肝同時移植:187グラフト、多臓器移植:71グラフト。

    ○ほとんどが短腸症候群で,主な原疾患は小児では腹壁破裂、壊死性腸炎、腸閉鎖症,成人では腸間膜動脈血栓症、Desmoid腫瘍、外傷です。

    ○尚,本邦では2001年3月までに4例に生体小腸移植が行われ,このうちグラフト摘出となった1例に脳死体移植が行われています。

     

  5. 臨床成績

    ○移植グラフト、ドナー(生体、脳死体)による差はありません。

    ○全症例のグラフト/患者の5年生存率は,それぞれ小腸単独移植 35 / 40 %、小腸/肝同時移植  35 / 40 %、多臓器移植  30 / 35 %です。

    ○1995年以後の症例に限ってみると、グラフト/患者の1年生存率は、それぞれ小腸単独移植約 55 / 85 %、小腸/肝同時移植約 66 / 63 %、多臓器移植約 63 / 63 %です。

    ○小腸は外界と直接接触する臓器で,リンパ組織が豊富なため,拒絶反応が起こりやすい。また腸内細菌が存在するために,感染症が容易に引き起こされる点が,成績に大きく関与しています。

     

  6. 脳死体ドナーと生体ドナーによる小腸移植の比較

    ○生体ドナーの長所としては,同じ施設の手術部内の隣りあった手術室にて同時に手術を進めることにより、グラフトの摘出から移植手術までの保存時間を可及的短時間に調節できる点、待機的に手術を予定できる点などから、グラフトの機能を良好に保つことができることです。

    ○生体ドナーの短所としては,健康体である生体ドナーにメスを入れるというリスクに関する倫理的な問題が存在する点、小腸グラフトの長さが限られる点、動脈、静脈の吻合部が細く、且つ短いため、時に血管グラフトを用いないといけない点などがあげられます。

 

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