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学会見聞記

16th International Taurine Meetingに参加して


清水 誠(東京大学大学院農学生命科学研究科、日本アミノ酸学会第1回学術大会実行委員長)

タウリンは分子量124の含硫アミノ酸(アミノエチルスルホン酸)で、タンパク質の構成成分にはならないが、細胞内の遊離アミノ酸としてはグルタミンと並んでもっとも高濃度に存在する成分である。その不思議な特性に惹かれた世界の研究者が2年に一度くらいのペースで集まり、議論するのがこのタウリン国際会議である。今回は十数年ぶりの日本での開催となり、2007年9月初旬の3日間、伊豆下田の人里離れたホテルに100人ほどの研究者が集結した。
筆者は、ハワイで開かれたタウリン会議(2002)、ドイツ(1999)、イタリア(2003)で開かれた国際アミノ酸・タンパク質会議でのタウリンセッションなどを介して、いわゆるTaurine people(タウリンオタク?)とは若干の親交があるが、今回も世界十数カ国からこれらの仲間が多数参加しており、会議は始めから和気藹々と進行した。
タウリンの研究でいつも思うことは、「タウリンは確かに何かしているのだが、何をしているのかがはっきりしない」ということである。今回も、神経・心筋、・血管等におけるタウリンの効能(多くは防御的な作用、すなわち抗ストレス、抗炎症など)に関する発表がいくつもあり、確かにタウリンは重要みたいであるなあ、という認識を持ちつつも、でも何でかわからんなあ、という印象をぬぐえないという3日間となった。しかし、そのような中でも、いくつかのブレークスルーは見えつつある。今大会の実行委員長である東 純一教授(阪大・薬)の研究室では、努力の甲斐あってついにタウリントランスポーター(TAUT)のノックアウトマウスの作成に成功した。ホモではTAUT発現がきちんと抑えられており、筋肉や脳でのタウリン濃度は極端に低い。しかし、驚くことにマウスはlethalでなく、きちんと育って成長する。ではタウリンはそれほど重要なものではないのか?と言うとそうでもなくて、KOマウスでは心筋の機能などがかなり低下している。なくても生きられるが、ないと元気に生きられない。まさにタウリンの本質を示しているような実験データが出つつあるようである。今後さまざまな組織でのタウリンの意義が明らかにされそうな期待があり、今大会の一つのハイライトとなった。
このような最先端の発表と同時に、タウリン研究の大御所の1人である米国のChesney教授(テネシー大・健康科学研究センター)は特別講演で、動物園で生まれたホッキョクグマの子供に骨の障害が多いのは人工乳を用いることによる摂取タウリン濃度の不足(クマ乳の八分の一)が原因ではないかという、あまり根拠のない、しかし面白い結果を示して聴衆を楽しませていた。ちなみに、筆者は会議の最終講演者として、腸管での炎症に対するタウリンの抑制作用に関するin vivoおよびin vitroの両実験系を使った解析結果を紹介したが、実験系が少し目新しいものであったせいか、沢山の質疑・コメントがあり、時間を忘れて長時間のディスカッションを楽しんだ。
このような小さい国際会議のよさは、日本アミノ酸学会の前身である必須アミノ酸研究委員会の講演会のように、討論の時間をあまり制限することなく、じっくりと相手を認識しながら討論することができるところにある。2007年11月に開催予定の日本アミノ酸学会の第1回学術集会も、このような良さを残しながら運営していけるようにしたいと考えているところである。なお、国際タウリン会議の次回は米国フロリダで2009年(春か秋)に開催することになった。正式な予定が決定したら、またアミノ酸学会等を介してお知らせしたい。


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