2024.09.18
免疫抑制薬の先発医薬品から後発医薬品への切り替えに関して
「タクロリムス・シクロスポリンの先発医薬品から後発医薬品への切り替えに関して、移植臓器の機能が安定している患者では服用中の薬剤を切り替えないことを推奨する。
根拠として、免疫抑制薬における先発医薬品と後発医薬品に治療的同等性を検証した質の高いエビデンスがない事。加えて、先発医薬品と後発医薬品の切り替えに際し、急性拒絶反応による移植臓器機能異常、免疫抑制薬の副作用の出現が報告されている。」
(補足)
臓器移植患者における免疫抑制薬の血中濃度は、患者ごとの目標濃度に対して±10%程度で精密にコントロールされている。
「免疫抑制薬TDM標準化ガイドライン[臓器移植編]2018(以下ガイドライン)」では、このような免疫抑制薬の精密な術後管理を支援する目的で、さまざまな角度から血中濃度管理の国内における均てん化を目的にまとめられている。
一方、後発医薬品の製造承認要件は健常被験者10名程度のクロスオーバー試験における-20% 〜+25%(AUCまたはCmax)の生物学的同等性試験に基づいており、臓器移植患者における使用を想定しているものではない。
加えて、免疫抑制薬の投与量設定に使用されているCmin(トラフ値)の同等性に関しては検討されていない。
したがって、先発医薬品で治療中の臓器移植患者における後発医薬品への切り替えを要する場合には、入院中の切り替えや頻回のTDMを推奨している(ガイドライン)。
この際に必要となる追加の検査に加え、急性拒絶反応や有害反応の発現などの医学的リスク並びにそれらがもたらす保険請求可能範囲を超える経済的負担を考え合わせると特に移植臓器の機能が安定している患者では先発医薬品から後発医薬品への機械的な切り替えは推奨しない。
2024年9月17日
日本移植学会 医療標準化・移植関連検査委員会 委員長 渡井至彦
日本移植学会 理事長 小野 稔