一般社団法人 日本心不全学会

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理事長挨拶

私たちの責務 心不全患者さんとそのご家族に質の高い生活を届けたい

photo この度、一般社団法人日本心不全学会の第7代理事長を拝命いたしました。心不全という病態は古くから認知されてきたものですが、ほぼ不治の病でありました(今でもまだある意味ではそうとも言えますが)。しかし1990年代になり、大規模臨床試験による薬剤エビデンスが徐々に蓄積されてきたこと、神経体液性因子理論に基づく心不全の発症増悪機序の解明など、が進みました。このような心不全に対する国内外における関心の高まりを背景に、米国心不全学会(HFSA)とヨーロッパ心臓学会(ESC)心不全部会(HFA)の設立に呼応して日本心不全学会が篠山重威初代理事長のもと設立され、1997年10月京都にて第1回学術集会が開催されました。その当時会員数は900名でしたが、その後、学会活動の普及・活発化とともに会員数は増加し、2006年には幅広い医療専門職を対象としたB会員も加わり、現在では4500名を超える学会に成長して参りました。そのなかで、本会は、幅広い研究活動の推進とともに、社会貢献活動を通じてわが国における心不全病学、そして心不全診療の発展を支えてまいりました。世界に類を見ない超高齢社会のわが国において、循環器領域における心不全の重要性はますます増しており、本学会の果たすべき役割は、重大であると認識しております。振り返ってみれば歴代理事長の方々はまさにわが国を代表する先生ばかりであり、私ではいかにも役不足の感は否めませんが、まことに光栄に感じておりますし、同時に身の引き締まる思いであります。浅学非才の身ながら、本学会の代表に選出いただきました上は、学会のさらなる発展に向けて精一杯努力する所存でございます。

学会のビジョン

本学会のビジョンは、心不全の病態解明と正確な診断、有効な予防、有効かつ安全な治療の開発を通じて患者さんとその家族に質の高い生活を届けることだと思います。

学会のミッション

筒井前理事長は、(1)チーム医療の推進、(2)医療専門職の教育・研修と患者さんの啓発、(3)臨床研究の基盤となるネットワークの充実の3つを学会の目標に掲げられ、6年の長きにわたり本学会をリードされ、広範かつ活発に学会活動を展開されました。チーム医療の推進と医療専門職の教育・研修と患者さんの啓発は表裏一体をなすものであり、心不全療養指導士の設定(日本循環器学会との共同)、心不全手帳の充実化(現在第3版)、など数多くの業績に結実しています。臨床研究の基盤となるネットワークの充実については新しい薬剤やデバイスの導入に伴うレジストリの構築も進んできています。また、日本循環器学会の5ヵ年計画を基に2018年に制定された脳卒中・循環器病対策法において、心不全が対策を要する重要疾病として認知されたことも本学会に追い風となってきております。これらの目標は今後とも目指していくものですが、さらなる発展を期して新たな目標として次の3点を挙げさせていただきたいと思います。

  1. 日本循環器連合の一翼を担い、横のつながりを強化する
    現在日本循環器学会を中心に本学会を含む8学会が日本循環器連合を形成して、相互の協力体制を模索しています。この試みは大変意義深いものと感じております。ややもすると循環器内科のサブスペシャリティの間に、壁が存在してお互いの足を引っ張りかねない状況すら危惧されてきました。多職種によるチーム医療を推進する上でも、循環器疾患に対応する医師間で協力体制に揺るぎがあってはなりません。学会同士の交流をさまざまなレベルで進めることが肝要と思っております。コロナ禍で喪失の危機にあった人と人の交流も徐々に回復基調にある今こそ横のつながりを強化すべきと思っております。
  2. 地域格差を解消し、在宅医療を推進する
    わが国の国土は広大ではなく、また交通網も発達していることから必要に応じて短期的に移動して必要な治療を受けることもさほど困難ではないと思われてきました。しかしながら、地方における著しい高齢化と地方の医療体制のミスマッチは明らかな事実です。高齢の心不全患者が重症化した場合に、必ずしも都会に移動して治療を受けることは物理的に可能でない、またはQOL的に著しい障害がある、などを考えますと地域内で完結できる医療体制が心不全領域には特に望まれます。ガイドライン推奨治療の促進、遠隔モニタリングの開発、各県に最低1つ最先端医療を提供できる病院の整備、在宅医療の制度設計、終末期を含む緩和医療の標準化、などが含まれます。対策法のもと整備が始まっている各都道府県の協議体と密に連携していくことも重要であると思います。
  3. Diversity and Inclusion
    まさに現在の流行語であるダイバーシティですが、私たちの学会では多職種によるチーム医療の推進で達成される部分が大きいと感じています。今後ともコメディカルスタッフと共に歩む心不全診療を推進してまいりたいと思います。しかしながら、最近働き方改革の影響だけではないと思いますが、若手医師の循環器離れが指摘されてきております。コロナ禍のweb開催は良い面ばかりとは言えず、若手の発表意欲を削いでいるのではないかとも案じられます。医師の年齢構成にも多様化が求められますし、若手医師に魅力を感じてもらえるような学会づくりを模索していきたいと思います。

いずれも会員の皆様のご協力なくては成し得ないものばかりで、会員の皆様の御指導ならびに御支援をお願いいたします。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

令和4年10月27日
日本心不全学会 理事長
絹川弘一郎