会員向け情報

会員出版情報(2022年〜2023年)

2022年から2023年にかけて出版された会員の書籍です。
ただし、すでに掲載されたものを除いています。(執筆者名五十音順)

阿部博友
『国際ビジネス法概論』

(中央経済社、2022年) 222頁 2,600円+税

 現在の国際ビジネス法務に必要な知識と情報を、現実のCASEと結びつけて実務的視点から解説した入門書。第1部「国際ビジネス法の基礎」においては、国際契約をはじめ、国際取引の基本的な法的枠組みを解説。また、第2部「公正な国際ビジネスの実現に向けて」においては、国際カルテルや外国公務員等贈賄など、国際ビジネスの裏に潜む違法行為を中心に解説。そして、第3部「国際ビジネス法の課題」においては、ESG時代の国際ビジネス法の課題としての環境対応や人権課題への対応について解説した。

井原 宏
『国際取引法〔下巻〕』

(東信堂、2023年) 406頁 4,500円+税

 本書は、国際取引法の体系書として 2022年に出版した『国際取引法〔上巻〕』に次ぐ〔下巻〕であり、「第1部 国際事業提携」、第2部 国際ジョイントベンチャーおよび第3部国際買収から構成されている。第1部は5章から構成されている。第1章は国際技術ライセンス関係から国際業務提携への発展である。第2章は、国際事業提携である。第3章は、国際事業提携契約の基本的構造である。第4章は、事業形態の選択のリスクとリーガルプラニングである。第5章は、提携関係の解消のリスクとリーガルプランニングである。第2部は、8章から構成されている。第1章は、国際ジョイントベンチャーのフレームワークである。第2章は、ジョイントベンチャー契約の基本的構造である。第 3章は、合弁会社の経営と管理におけるリスクとリーガルプランニングである。第4章は、ジョイントベンチャーの経営における人材管理のリスクとリーガルプランニングである。第5章は、パートナーシップ型ジョイントベンチャー経営における忠実義務違反のリスクとリーガルプランニングである。第6章は、コーポレート型ジョイントベンチャー経営における忠実義務違反のリスクとリーガルプランニングである。第7章は、アメリカ反トラスト法による規制である。第8章は、EU 競争法規制である。第3部は、9章から構成されている。第1章は、国際買収のフレームワークである。第2章は、国際買収のプロセスである。第3 章は、国際買収契約の基本的構造である。第4章は、買収におけるデューディリジェンスのリスクとリーガルプランニングである。第5章は、買収後の経営におけるリスクとリーガルプランニングである。第6章は、アメリカにおける買収防衛策である。第7章は、アメラカ反トラスト法による規制である。第8章は、EU 競争法による規制である。第9章は、わが国独占禁止法による規制である。

井原 宏
『国際取引法講義』

(大学教育出版、2023年) 374頁 3,500円+税

 本書は、多角的な観点から国際取引法に関する問題を分析・整理した、国際取引法の標準的な教科書である。本書は10章から構成されている。第1章は、「国際物品売買契約」である。契約の総則、契約の成立、契約の内容、契約の履行と不履行、契約の解除および損害賠償について解説する。第 2章は、「国際物品売買の付属契約」である。定型取引条件としてのインコタームス、国際運送契約、国際貨物海上保険契約および国際代金決済について概観する。第3章は、「コーポレートガバナンスの構築」である。アメリカ型コーポレートガバナンス、日本型コーポレートガバナンス、社外取締役、コーポレートガバナンス形態の強化、企業法情報の開示規制、情報開示によるコーポレートガバナンス、マネジメントの説明責任およびグローバル企業のガバナンス・システムについて検討する。第4章は、「コンプライアンス・システムの構築」である。コンプライアンス・プログラム、内部通報制度およびコンプライアンス・システムの整備・強化について検討する。第5章は、「国際技術ライセンス」であるい。国際技術ライセンスの機能、国際技術ライセンス契約の形態、国際技術ライセンス契約の基本的構造、ライセンサーの義務のリスクとリーガルプランニング、ライセンシーの義務のリスクとリーガルプランニングおよびアメリカ反トラスト法による規制について概説する。第6章は、「国際事業提携」である。国際事業提携のフレームワーク、国際事業提携契約の基本的構造、事業形態のリスクとリーガルプランニングおよび提携関係解消のリスクとリーガルプランニングについて検討する。第7章は、「国際ジョイントベンチャー」である。国際ジョイントベンチャーのフレームワーク、コーポレート型国際ジョイントベンチャー契約の基本的構造、パートナーシップ型ジョイントベンチャー契約の基本的構造、合弁会社の経営と管理におけるリスクとリーガルプランニングおよびアメリカ反トラスト法による規制について解説する。第8章は、「国際買収」である。国際買収のフレームワーク、国際買収のプロセス、国際買収契約の基本的構造、買収におけるデューディリジェンスのリスクとリーガルプランニング、買収後の経営におけるリスクとリーガルプランニングおよびアメリカ反トラスト法による規制について解説する。第9章は、「国際取引における紛争解決」である。国際仲裁および国際訴訟について概説する。第10章は、「国際取引法の研究」である。ビジネス・ローおよびリーガルプランニングについて紹介する。

井原 宏
『国際取引法入門』

(信山社、2023年) 230頁 2,500円+税

 国際取引法の入門書はこれまで出版されていない。本書は、四六判の国際取引法入門書である、本書は、8章から構成されている。第1章は、「国際物品売買契約」である。契約の成立、契約の内容、契約の履行・不履行、契約の解除および損害賠償について概説する。第2章は、「コーポレートガバナンス・システムの構築」である。アメリカ型コーポレートガバナンス、日本型コーポレートガバナンス、社外取締役、コーポレートガバナンス形態の強化、企業情報の開示規制、情報開示によるコーポレートガバナンス、マネジメントの説明責任およびグローバル企業のガバナンス・システムについて検討する。第3章は、「コンプライアンス・システムの構築」である。コンプライサンス・プログラム、内部通報制度およびコンプライアンス・システムの整備・強化について検討する。第4章は、「国際技術ライセンス」である。国際技術ライセンス契約の機能と形態、国際技術ライセンス契約の基本的構造、ライセンサーの義務およびライセンシーの義務について検討する。第5章は「国際事業邸右傾」である。国際事業提携のフレームワーク、国際事業提携契約の基本的構造、提携の解消および提携関係の発展について考察する。第6章は、「国際ジョイントベンチャー」である。国際ジョイントベンチャーのフレームワーク、コーポレート型国際ジョイントベンチャー契約の基本的構造および合弁会社の経営と管理について検討する。第7章は、「国際買収」である。国際買収のフレームワーク、国際買収の形態、国際買収のプロセス、国際買収契約の基本的構造および買収におけるデューディリジェンスについて考察する。第8章は、「国際取引における紛争解決」である。国際仲裁および国際訴訟につい解説する。

今村 隆・大野雅人(共著)
『移転価格税制のメカニズム』

今村(会員)第1章、第2章 1・2・3(1)(3)、第4章、第5章、第7章 1
大野(会員)第2章 3(2)(4)、第6章、第7章(2)
(中央経済社、2023年) 328頁 4,400円+税

 本書は、法務省に所属し移転価格税制の訴訟に関わった著者(今村)と国税庁に所属しOECDの移転価格に関するワーキング・パーティ6の日本代表として移転価格ガイドラインに関わった著者(大野)が共同して、難解な移転価格ガイドラインを分析するとともに、わが国を始め各国の移転価格税制に関する訴訟において、ガイドラインの考え方が活かされているかを検証した本である。
 現在、移転価格税制は、OECDの進めているBEPSプロジェクトでも重要な役割を期待されているが、一方で、独立当事者間原則の妥当性が揺らいでいて、岐路に立っている状況にある。本書は、そのような状況を踏まえて、今後、移転価格税制の進むべき方向を検討するものである。

久保田 隆
『法律学者の貨幣論:デジタル通貨・CBDC の未来』

(中央経済社、2023年) 3,300円+税

 ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)やテザーなどのステーブルコインの取引が拡がり、日本を含む主要国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入が数年以内に見込まれるなど、貨幣を巡る状況は大きな転換期にある。そこで本書は、経済学者を中心に議論されてきた「貨幣とは何か?」について、法律学者の観点から、初学者にもわかるように様々な角度から検討したものである。ちょうど同時期に、貨幣とは何かに関する様々な角度からの新刊が本書を含めて4巻発刊されており、日本経済新聞 2023年11月25日付朝刊「活字の海で」の「お金」の謎に迫る4冊:暗号資産やMMT が再定義促す」との記事の中で本書も紹介され、「『法律学者の貨幣論』(久保田隆著、中央経済社、23年9月)はデジタル通貨を軸に、お金と法律との関係を幅広く論じる。」と書かれている。

久保田 隆(共著)
『Changing Orders in International Economic Law Volume 2: A Japanese Perspective』

(Dai YOKOMIZO, Yoshizumi TOJO, Yoshiko NAIKI, Eds.)
(Routledge、2023年) 60~70頁(全 171頁) 25,906円+税

 日本国際経済法学会の主要メンバーが国際経済法の様々な側面について執筆した論文集。久保田は、 “Chapter 7 Monetary Sovereignty and Future Global CBDC Competition: A Japanese Perspective”を執筆した。

久保田 隆(共著)
『International Monetary and Banking Law in the post COVID-19 World』

(William Blair, Chiara.Zilioli, Christos Gortsos, Eds.)
(Oxford University Press、2023年) 271~287頁(全 467頁) 42,353円+税

 国際法協会通貨法委員会の主要メンバーが国際金融法の様々な側面について記述した論文集。久保田は、Chapter 12, Japanese and International Law Developments of Crypto and Digital Currencies, pp.271–287、を執筆した。

神山智美
『種苗法最前線─ バイオ特許からブランド品種保護まで』

(文眞堂、2023年)460頁 5,800円+税

 石川県の「ルビーロマン」の商標権問題が話題になったばかりである。「シャインマスカット」というブランド品種保護が十分でないことから失われた利益も大きい。一方、生物多様性条約(COP15)に関して、遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用と利益の配分にも一定の合意がなされた。品種開発を担うバイオ技術の進展の速さに、ルールメーキングも追随する必要がある。本書は、国内における種子法の廃止、種苗法改正のみならず、日本の植物新品種保護のあり方を、特許および品種登録の国際比較と知的財産権保護の歴史を踏まえ、検討しているものである。新たな種苗法の時代を予見させる専門書であると同時に、種苗行政担当・種苗法関連事業者必携の書である。

四方藤治
『変容する現代社会と株式の法的性質」』

(早稲田大学出版部、2022年) 236頁 4,000円+税

 株式についてはある種の所有権性が認められるというのがこれまでの数通説・判例であった。しかしこの考え方は、激しく変動する現代社会の中で直しが迫られている。このことを、英米法の議論をふまえつつ、日本における株式制度の変容を論じた。

高橋 均
『グループ会社リスク管理の法務(第4版)』

(中央経済社、2022年) 268頁 2,700円+税

 グループ会社ガバナンスの重要性の視点から、グループ会社のリスク管理について、企業集団の内部統制に係る法と実務の両面から整理した書籍。近時、本体の事業部門を分社して子会社化したり、 M&Aによる子会社化を実行することにより、グループ全体として企業の競争力を確保する企業経営が定着している。一方において、グループ会社の事件・事故も散見されている。そこで、企業集団の内部統制システムに関する法令を確認した上で、グループ会社のリスク管理に関する具体策やグループ会社を巡る裁判例、持株会社形態や海外子会社に特化したリスク管理についても詳説している。
 第4版では、令和元年会社法で創設された子会社化のための株式交付制度やコーポレートガバナンス・コードの再改訂の解説、3ラインモデルを活用したグループ会社管理、グループ会社とESG 対応等の最新トピックスを反映している。

高橋 均
『会社法 実務スケジュール(第3版)』共編

(新日本法規出版、2023年) 622頁 6,500円+税

 会社運営に関連して規定されている内容において、研究者・法曹実務家・企業実務家の共同執筆によって編集した会社や株主等が遵守すべき各種スケジュールに焦点を当てた書籍。会社や株主等の関係者は、自らの法的権限や義務を行使・履行するためには、一定の期限が存在する。そこで、株主総会や取締役会等の会社機関運営関連、株式譲渡や募集株式発行等の株式関連、剰余金の配当等の計算関連、合併・会社分割等の組織再編関連、会社設立や解散関連、訴訟・非訴訟関連等について、合計38項目にわたって、遵守すべきスケジュールを一覧として整理した上で、各々の項目について解説を加えている。
 会社法に限らず、金商法・振替法・商業登記法・各種法令等、さらには上場規則等のソフト・ローの明示、公開会社・非公開会社、大会社・非大会社を区別したスケジュールを示している点も特徴である。
 第3版では、令和元年改正である株主総会関連の改正をはじめ、スケジュールに関係する最新の法令内容を反映させている。

高橋 均
『監査役監査の実務と対応(第8版)』

(同文舘出版、2023年) 384頁 4,000円+税

 監査役監査の実務について、15年以上、監査役や監査役スタッフに支持されて増刷・増版されたバイブル的書籍。指名委員会等設置会社の監査委員、監査等委員会設置会社の監査等委員の実務にも対応している。近時は、監査役の関係者のみならず、監査役と連携を必要としている内部監査部門関係者や会計監査人等の読者も多い。
 第8版では、令和4年9月1日施行会社法及び令和3年改訂のコーポレートガバナンス・コードに係る監査役関係個所を反映・解説するとともに、様々な実務に即した80以上の実例や様式の一部リニューアル、監査役を巡る代表的裁判例の概要・判旨・解説を加えている。また、姉妹書籍である『監査役・監査(等)委員監査の論点解説』(同文舘出版)との関連個所を明示することにより、読者が応用的な論点についても理解を深めることができるように工夫されている。

松岡博編
『レクチャー国際取引法(第3版)』

(法律文化社、2022年) 全286頁 (うち、吉川英一郎・山崎理志「第13章 国際取引法務」(250~276頁)を担当執筆 3,000円+税

 同書は問題指向型アプローチを採る「国際取引法」の入門テキストである。第13章は、企業の国際法務部門の業務(契約法務・争訟法務)や顧問弁護士との関係を、企業実務の観点から解説している。

第一東京弁護士会総合法律研究所(編著)
『最先端をとらえる ESG と法務』

(清文社、2023年)全 392頁[松村啓分担執筆頁:160 ~ 170頁] 3,500円+税

 第一東京弁護士会創立100周年を記念して出版された本書に、同会の総合法律研究所・宇宙法研究部会の活動の一環として、宇宙法に馴染みのない読者を想定して分担執筆を行った。表題は、「宇宙資源法、宇宙の特許権-「どこでもない場所」からの眺め」である。内容は、大別して2つの問題に関わる。第1に、宇宙資源の所有権を認めるべく 2021年に施行された宇宙資源法の、第5条の文言について簡単に考察し、いずれの国家も領有できない「どこでもない場所」で宇宙資源が採掘されることが、興味深い問題をもたらすことを示唆した。第2に、「どこでもない場所」である宇宙空間に、ある国の特許権の効力を及ぼすことは許されないかという問いを提示し、「属地主義」に言及した学説を参照しつつ簡単に考察した。以上により、宇宙法には、それが「どこでもない場所」である宇宙空間に関係するが故の、特有の問題が伏在していることを、読者に紹介した。

渡部友一郎
『攻めの法務 成長を叶えるリーガルリスクマネジメントの教科書』

(日本加除出版株式会社、2023年)270頁 2,900円+税

 2019年、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会(経済産業省)が報告書を公表し、「法務機能」の枠組みが精緻化された。翌 2020年、同研究会の構成員でもある著者は、平野温郎教授の助言を受け、『リーガルリスクマネジメントの先行研究と新潮流 ─5×5のリスク分析ツールからISO31022の未来まで』と題する論文を国際商事法務48巻6号に掲載した。著者はその後も研究を続け、同年にリーガルリスクマネジメントの初の国際規格であるISO31022:2020が発効したことを受け、戦略法務・予防法務をさらに発展させる臨床法務技術としてリーガルリスクマネジメントを実用的な枠組みとして普及させた。本書は、この2019年から2023年に至る研究成果をまとめたものであり、従来の法学実用書には珍しい漫画を手法として大胆に取り入れ、臨床法務技術を分かりやすく解説している。

会員出版情報(2020年〜2021年)

2020年から2021年にかけて出版された会員の書籍です。

井原 宏
『国際技術ライセンス契約 そのリスクとリーガルプランニング』

(東信堂、2021) 300頁 3,200円+税

 本書は、企業が所有する知的財産の戦略としての国際技術ライセンス契約にかかわる法律問題についてどのようなリスクがあるか、そのリスクにどのように対処するかという視点から分析し、体系的に整理したものであり、実際の英文ライセンス契約の条項を参照しつつ、8つの章から構成されている。第1章 国際技術ライセン契約の機能と形態、第2章 国際技術ライセンス契約の交渉、第3章 ライセンス契約のリスクとリーガルプランニング、第4章 ライセンサーの義務のリスクとリーガルプランニング、第5章 ライセンシーの義務のリスクとリーガルプランニング、第6章 競争法による規制のリスクとリーガルプランニング、第7章 国際技術ライセンス契約の紛争解決、第8章 国際技術ライセンス契約関係の発展 である。
 本書執筆の動機は、筆者の企業時代の企画部門・法務部門におけるライセンスにかかわる実務経験、日本ライセンス協会における理事として他社の専門家との交流、WIPO・インドネシア政府主催のライセンスに関する国際セミナーの講師や5回にわたる特許庁主催の発展途上国向けライセンスに関するセミナーの講師としての経験から国際技術ライセンスに関する概説書の必要性を認識したことに由来している。

井原 宏
『企業経営のための経営法学』

(大学教育出版、2021) 297頁 3,000円+税

 本書は、企業経営にかかわる法律問題についての多様な視点を整理して、12の章から構成されている。第1章 企業形態、第2章 コンプライアンス経営、第3章 企業統治、第4章 事業戦略1、第5章 事業戦略2、第6章 事業戦略3、第7章 知的財産管理、第8章 取引管理、第9章 公正取引、第10章 人材管理、第11章 グループ子会社管理、第12章 紛争管理 である。
 現代の企業は、事業活動を展開するに際し、企業活動にかかわるさまざまな法律問題に直面する。そのような法律問題あるいは法律問題のベースとなる関係法律の理解なくして、企業を取り巻く環境の下で事業活動を推進することは不可能である。しかしながら、現代の企業経営にかかわる法律問題は多岐にわたり、かつ複雑であることから、その全容を把握し理解することは容易なことではない。本書は、企業経営にかかわる法律問題を体系的に整理し、その基本原則を理解しつつ、実際の企業経営に活かすことを目指すものである。
 本書執筆の動機は、筆者が慶應ビジネススクール(KBS)において、長年、「経営法学」という科目を担当した経験を踏まえて、経営法学の概説書が必要であるとの認識を深めたことに由来している。

阿部博友
『リーガルイングリッシュ』

(中央経済社、2021) 315頁 3,400円+税

 本書は、国際舞台で活躍するビジネスパーソンに不可欠なコミュニケーションの技法の中から法的なコミュニケーションの技法を分かりやすく解説した。法律英語は、難解であると言われ、敬遠されがちであるが、忙しい読者の便宜も考慮して5つのPART(全体で25のLESSON)に体系化して解説した。豊富な例文を紹介しつつ、文法の解説から英文契約書やビジネスレターの要点、そしてビジネスコミュニケーションの技術を実務に役立つようコンパクトにとりまとめた実用書である。
 本書の目次は以下の通り。

1 BASICS OF LEGAL ENGLISH
  (Legal Englishの誕生;コモンローとは何か ほか)
2 TECHNIQUES OF LEGAL ENGLISH
  (Legal Latinを知る;句読点と約物のきまり ほか)
3 LEGAL ENGLISH AND BUSINESS COMMUNICATION
  (対面コミュニケーションのスキル;法的要求文書の作法 ほか)
4 LEGAL ENGLISH ON CONTRACTS
  (不誠実な交渉の代償;契約書の解釈原理 ほか)
5 LEGAL ENGLISH FOR MANAGEMENT
  (役員の法的責任;カルテル規制と刑事罰 ほか)

 本書執筆の動機は、英語で法律を理解する力が、ビジネスの成否を左右するという実体験である。英語は得意でも、倒立英語はよく分からないというビジネスパーソンのために基礎から交渉術まで修得できるように解説した。一橋大学法科大学院における法律英語の教室で培ったノウハウを、多くのビジネスパーソンにも伝えられるように書籍化した。

高橋 均
『監査役監査の実務と対応(第7版)』

(同文舘出版、2021) 386頁 3,800円+税

 本書は、監査役・取締役監査等委員・取締役監査委員及びそのスタッフの方々を読者として念頭において、監査役等監査の実務とそれを裏付ける法制度の両面からアプローチを行った実務書。様々な実務に対応した80以上の豊富な実例や様式、重要論点のトピックスやQ&A、株主総会における30の代表的想定質問と回答方針等実務に役立つ情報も豊富に掲載している。初版の2008年から10年以上にわたり、監査役等の実務家から支持され続けて増刷・増版を重ねてきたバイブル的書籍。監査役等との連携を必要としている内部監査部門や会計監査人の読者も多い。

神山智美
『行政争訟入門(第2版):事例で学ぶ個別行政法』

(文眞堂、2021) 186頁 2,420円+税

 本書は、「社会に出る前に知っておきたい行政争訟(行政救済法)」として、主に行政個別法の主領域と、学部生の興味関心を踏まえて行政領域ごとに構成したものである。
行政法の学習は、「行政法総論」と「行政救済法」に終始することになりがちであり、抽象性の域を出づらい。小中学校時代から学んできた憲法とは異なり、「難しい」印象を抱かれてしまうのも難点である。だが、実社会における活用までを視野に入れると、身近な行政領域の事例および裁判例の中で、学んだ抽象論を確認するという学びが必要になると筆者は考えており、そのためのテキストである。
 もちろん対象は広く、公務員になる人、会社員になる人、起業する人、家庭内ライフイベントにも必読と考える。子どもが「待機児童」になりそうなとき(福祉行政)、生活保護世帯の引っ越しはどうなるの(社会保障行政)、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」「SOGIハラ」等に関する法律(労働行政・市民生活行政)、新型コロナウイルス感染症対応の法律について(公衆衛生行政)、動物愛護と殺処分(動物行政)、採卵鶏や家畜のアニマルウェルフェア(動物福祉)とは(産業行政)、ヘイトスピーチやフラッシュモブにはどんな規制があるのか(表現の自由と公物管理)等、オーソドックスな許認可行政(産業振興行政)や警察・消防行政に限らず、学部生の関心に寄り添った書である。

加藤友佳
『多様化する家族と租税法』

(中央経済社、2021) 264頁 5,000円+税

 本書は、働き方や婚姻制度などのライフスタイルの多様化に着目し、家族と租税法に係る諸外国の判例等について比較分析を行ったうえで、わが国の家族税制に理論的検討を加えるものである。本書の構成は、第1編 家族と租税法、第2編 結婚と租税法、第3編 同性カップルと租税法、第4編 社会と租税法の、4編9章からなっており、新しい家族制度とそれに対応する租税法のあり方について体系的な検討を行っている。
 国際的潮流として多様な家族のあり方を認めて法改正を行う国が急増しており、同性パートナーが租税法上の配偶者となる選択肢が保障されていることから、本書ではアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、EUを中心に制度および判例を整理し、比較法的考察を行った。そのうえで、日本租税法における同性パートナーの可能性を探るべく、借用概念と準拠法というアプローチから、同性婚配偶者および登録パートナーの準拠法上の性質を類型化することにより、租税法上の配偶者と同性パートナーの法的研究の糸口を示すものである。

登島和弘
『ここからはじめる企業法務‐未来をかたちにするマインドセット』

(英治出版 2021) 256頁 1,800円+税

企業法務はこんなに面白い!
〇ビジネスを前に進める上では欠かせないにもかかわらず、その実態が見えづらい企業法務という仕事。法務パーソンとしてキャリア30年以上の著者が、その仕事の本質と全体像を分かりやすく解説し、その面白さを伝える一冊。

<本書の特徴>
〇対話をベースにした分かりやすさ
上司と部下の対話を軸に分かりやすく解説。著者の長年の経験に基いた現場のリアリティを追体験できる。
〇現場で求められる「マインドセット」に着目
法律の知識や英語力などだけでなく、企業法務という仕事に特有の「マインドセット」があることを提示。

<目次>
第1章 企業法務の実像 第2章 イシューを発見する 第3章 危険を察知する
第4章 着地点を探す  第5章 「視える化」する  第6章 視野を広げる
第7章 企業法務の未来を描く

阿部博友
『ブラジル法概論』

(大学教育出版、2020) 242頁 3,080円+税

 本書は、「秩序と発展」を国是とするブラジルの法体系について歴史的成り立ちから現在までの姿を概説し、さらに著者の専門分野である経済法についてブラジルの特徴を考察したものである。第Ⅰ編は法構造と司法制度を平易に解説し、第Ⅱ編は会社法、競争法、腐敗防止法および仲裁法の4つの主題から現代ブラジル法の特質を追究した研究や実務に役立つ概説書。本書の構成は以下の通り。

第I編 ブラジル連邦共和国の法制度
序 論 ブラジル法の形成過程
第1章 1988年憲法・政治体制・司法制度
第2章 刑法および刑事訴訟法
第3章 民商法
第4章 民事訴訟法・倒産法
第5章 企業法・資本市場法
第6章 経済法
第7章 知的財産権法
第8章 労働法

第II編 ブラジル経済法の論点
序 論 経済秩序の形成と法
第1章 ブラジル株式会社法の概要と特質
第2章 競争法の歴史的展開
第3章 腐敗防止のための法人処罰法
第4章 国際商事仲裁と法

 本書執筆の動機は、優れたブラジルの法制度を概括的に照会することによって、わが国に紹介したいという筆者の永年の願いである。1988年から5年間ブラジルに滞在し、企業法務に携わった経験や、その後大学院でブラジル会社法の研究を継続した実績などを本書に著し、ブラジルに関心のある読者の参考に供した。なお、日本貿易振興機構(JETRO)の二宮康史志先生の書評が以下に掲載されている(http://www.js3la.jp/journal/pdf/ronshu54/54_ninomiya.pdf)。

高橋 均
『実務の視点から考える会社法(第2版)』

(中央経済社、2020) 325頁 3,100円+税

 本書は、著者の企業実務(法務等のコーポレート部門)及び法科大学院での教鞭の双方の経験が活かされた書籍。膨大な条文数のある会社法について、株式会社の重要な項目について、その立法趣旨も含めて丁寧に解説している。実務の視点が念頭にあるため、伝統的な会社法の体系書とは異なり、第1編 会社機関 第2編 株式 第3編 計算 第4編 資金調達 第5編 組織再編 第6編 会社設立と解散 の解説の順番としている。また、会社法を初めて学習する読者の利便性を考えて、会社法の読み解き方や商法と会社法の関係等、会社法を理解する上で役立つ記載もある。さらに、読者の理解の促進のために、各章に事例問題を掲載するとともに、考える際のポイント・関連条文・解答骨子も記述している。この理由は、本文解説の内容の確認とともに、具体的な場面で会社法を当てはめることの重要性を認識してもらうことを狙いとしているからである。
 株式会社運営を行うための基本法である会社法を法理論と企業実務の両面から理解し活用されることが本書の目的である。会社役員や基幹管理職の社内研修用として使用している会社も多い。会社法について、今までまとまって学修する機会がなかった方はもちろんのこと、商法とは条文構造も内容も大きく異なった会社法を再確認されたいと考える読者に特に有用である。

今村 隆
『課税分配ルールのメカニズム』

(中央経済社、2020) 424頁 4,800円+税

 本書は、租税条約における事業所得,給与所得などの各種所得について締約国のいずれが課税権を有するかを定める配分ルールについて,OECDのモデル租税条約を中心に各国裁判例を多数紹介して分析し,あるべき解釈を示すものである。
 また,本書は,このような配分ルールの基本メカニズムを明らかにするとともに,①租税条約が二国間を超える関係にも適用されるか,②租税条約は盾にすぎないのか,剣ともなり得るのか,③租税条約は,二重課税の排除だけが目的か,それとも二重非課税の排除も含むかといった租税条約についての本質的問題を解明することを目標とするものであり,筆者の見解を展開するものである。 これまで配分ルールについての同様の体系書はなく,実務家だけでなく,研究者や大学院生にも参考になるものである。

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