臓器移植Q&A

肺

移植後の妊娠、出産

移植後の妊娠と出産について教えてください。

肺移植後女性患者さんの妊娠・出産は、国際的に報告はありますが、現時点ではきわめて慎重に考えるべきとされています。免疫抑制薬の一部には催奇形性(胎児に奇形を引き起こす性質)のあるものが含まれますので、妊娠に際して、免疫抑制薬の調整が必要となります。さらに妊娠を契機に拒絶反応が起こりやすくなったり、高血圧や腎機能の悪化が起こったりする等の報告があります。とくに拒絶反応は、母体・胎児の死亡に直結してしまう可能性があります。
それでも妊娠を強く希望する場合には、主治医と十分に相談してください。妊娠に至った場合は、移植医、看護師、産婦人科医など多くの専門家の緊密な協力のもと、きわめて慎重な経過観察がなされるべきです。
以上より、現時点では肺移植後の妊娠・出産は文字通り「命がけ」と言わざるを得ない状況かもしれません。ただし、将来的に副作用の少ない免疫抑制薬の開発等により、肺移植後の妊娠・出産がもう少し安全になる可能性があるかもしれません。

移植後の男性の場合には、男性が内服している免疫抑制薬が母体・胎児に影響するという報告はありません。ただ移植前と比べると移植後は全身の体調が良くなり、ホルモンのバランスも良くなることから、移植前に減退していた性的欲求も通常に回復するため、家族計画には注意する必要があります。

執筆:大石 久・岡田 克典

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