移植ことば辞典

ま行
マクロライド系抗生物質
化学構造上マクロライド環を有する抗生物質の総称。比較的副作用が少なく抗菌スペクトルも広いです。小児から老人まで広く処方されます。リケッチア、クラミジアなどの細胞内寄生菌、マイコプラズマ、抗酸菌に対する抗菌力を有する点が特徴的です。一方で、耐性をきたしやすく、また、肝での代謝酵素の特徴から、免疫疫抑制薬、気管支喘息薬、高血圧治療薬、抗てんかん薬などと相互作用が知られ、移植後の投与の際は注意が必要です。
慢性拒絶反応
移植後3ヶ月以降に徐々に移植腎機能が悪化する拒絶反応で、現時点では原因ははっきりしておらず、有効な治療法も確立されていないため、移植腎が廃絶する一番の原因になっています。組織適合性や抗体、急性拒絶反応の影響、免疫抑制療法、ウイルス感染などの免疫に関連した原因の他にも、ドナー(提供者)の状態、腎臓に対して毒性を持つ薬剤の影響、高血圧・脂質異常症・肥満などの合併症など、非免疫的な原因も考えられています。そのため、移植後は免疫抑制薬をきちんと服薬し、合併症を予防する食生活や運動が大切です。
マージナルドナー
マージナルドナー(marginal donor)は標準的ドナー条件を満たさないドナーという意味で、拡大適応ドナー(extended criteria donor)ともいわれます。海外では50歳未満の脳死ドナー以外は献腎ドナーとしてはマージナルドナーに定義され、心臓停止下のドナーはこれにあたります。生体腎移植においては高齢者の他に、高血圧、肥満、軽度の糖尿病を合併したドナーがこれにあたります。2014年に日本移植学会、および日本臨床腎移植学会から生体腎移植のドナーガイドラインが出されています。
慢性腎不全、末期腎不全(ESRD)
腎臓の慢性の病気のために、腎臓の機能が健常人の約30%程度にまで低下した状態を慢性腎不全といいます。症状としては、水分の排泄が妨げられ、むくみが現れます。また老廃物が蓄積し、頭痛、吐き気、血圧上昇を認めるようになります。このような状態でも透析等が必要ではない状態を腎不全保存期といい、塩分制限、血圧管理などにて腎不全の進行を遅らせることも可能です。腎不全が進行し、体内に蓄積した水分や老廃物をなんらかの方法で除去しなくてはならない状態を末期腎不全(ESRD:end stage renal disease) といいます。患者さんの年齢、生活環境などを考え、血液透析、腹膜透析、腎移植の3種類の治療法から選択されます。
免疫抑制薬
他人の臓器が体内に入る移植では、移植臓器を抗原と認識して攻撃する免疫反応により、移植臓器障害を来す拒絶反応が生じるため、免疫反応を抑制する免疫抑制薬を投与して拒絶反応が起こらないようにします。免疫抑制薬には、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗剤、ステロイド、抗体製剤、哺乳類ラパマイシン標的蛋白質阻害剤など作用機序の違う製剤があり、拒絶反応を抑制し、かつ免疫抑制薬による副作用を生じないようにこれらを組み合わせて使用します。免疫抑制薬は移植には必要な薬ですが、副作用もあるために移植専門医が処方することが望ましいです。 また、免疫抑制薬服用中は免疫力が低下するため、感染の頻度が増えて重症化しやすくなり、悪性腫瘍も多くなるため、移植後は感染予防や悪性腫瘍の定期検診が大切です。
メタボリック症候群
よく「メタボ」とも言われ、内臓脂肪の肥満に代謝障害のうち高血糖・高血圧・脂質異常症の2つ以上が合併している状態のこと。これらが重なると相乗的に動脈硬化性疾患の発生頻度が高まり、心筋梗塞や脳梗塞、腎機能障害が起きやすくなるので死亡の危険性が高くなります。日本肥満学会の診断基準(2005年)では、腹囲が男で85cm、女で90cm以上、中性脂肪が150mg/dL以上、収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上、空腹時血糖値が110mg/dL以上となっています。腎移植後は免疫抑制薬の副作用でメタボリック症候群になりやすいので注意が必要です。