臓器移植Q&A
臓器移植全般
拒絶反応、感染症、合併症
- 移植後はどのような感染症にかかり易くなるのですか?
- 感染症を疑う症状には、どのようなものがありますか?
- 日常生活ではどのようなことに気を付けて感染予防をすればいいですか?
- 予防接種は受けていいですか?
- 新型コロナウイルス感染症に対する注意点は?
移植後はどのような感染症にかかり易くなるのですか?
拒絶反応を抑えるための免疫抑制薬を使うと、体の抵抗力が低下するため色々な感染症にかかり易くなります。感染症は免疫抑制薬の使用量が多い移植後3カ月以内に発生することが多く、時に感染症が死にもつながる最大の合併症になる場合もあります。臓器毎に基準が違いますので、主治医・レシピエント移植コーディネーターに相談してください。
移植後の経過時期によって、かかり易い感染症があります。
移植後の時期 | かかり易い感染症 | 病原体 |
---|---|---|
移植後 すぐ |
細菌性感染症 真菌感染症(カビ) |
表在性・黄色ブドウ球菌等 カンジタ等 |
移植後 1~3ヵ月 |
ウイルス性感染症 | サイトメガロウイルス ヘルペスウイルス等 |
移植後 だいぶたって |
日和見感染症 | 原虫(トキソプラズマ) 真菌(アスペルギルス、クリプトコッカス) 種々のウイルス |
臓器移植後は肺炎や敗血症などになりやすいため、普通の人以上に健康に注意しなければなりません。ちょっとした風邪やけがをした場合でも担当医やレシピエント移植コーディネーターにまず電話で連絡をした上で、必要なら外来を受診してください。
- 手洗い・うがい…免疫抑制薬の内服によって免疫力が低下し、感染症にかかり易くなっています。日常生活において手洗い・うがいを励行することが大切です。
- マスクの着用…移植後3カ月以内は外出時にマスクを忘れないようにしてください。その後は、人ごみに入るとき、インフルエンザが蔓延しているときなど、時期に応じてマスクの着用を指示することがあります。
- 動物への注意…動物の糞の中には種々の真菌(カビ)がいるので、動物園や鳩の多い公園には行かないようにしてください。
- 建物の工事をしているようなところでは、真菌(アスペルギルスなど)の混入した粉塵が飛んでいる可能性が高いので、避けて通りましょう。
感染症を疑う症状には、どのようなものがありますか?
下記のようなものがあります。
- 37.5度以上の発熱が24時間以上続いたり、突然の38度以上の高熱が出たりした場合
- 鼻汁、咳
- 下痢、腹痛
- リンパ節の腫脹
- 頻尿・排尿時痛
- 発疹
日常生活ではどのようなことに気を付けて感染予防をすればいいですか?
下記のようなことに気をつけ、予防をしてください。
- 風邪やけがは早めに治しましょう
- 外出時は手洗い、うがい、人ごみでのマスク着用を忘れずに
- 動物を飼うのは、出来る限り控えましょう
予防接種は受けていいですか?
原則的に、風疹、おたふくかぜ、はしかなどの生ワクチンは移植後に接種できませんので、移植前に接種しておきましょう。
移植後の予防接種は主治医に相談してください。受けてはいけない予防接種や、経過を見ながら受けてもらうものなどがあります。移植後6カ月を経過していれば、インフルエンザワクチンは接種しましょう。
新型コロナウイルス感染症に対する注意点は?
2020年1月から日本にも入ってきた新型コロナウイルス感染症については、本文執筆時点(2021年3月)では、まだ確定的なことは言えません。
しかし、最新情報は、この日本移植学会のホームページの「COVID-19関連情報〈一般の方向け〉」を参照してください。また、同じページに「移植医療におけるCOVID-19関連のQ&A<一般の方向け>」も掲載しておりますので、ご参照ください。
以下に現在分かっていることを記載します。
- 日常生活での注意事項は、一般の人と同様です。
- 移植を受けた人は免疫抑制薬を使っているので重症化しやすい傾向があります。
- 感染を心配して、免疫抑制薬を自己判断で中止や減量をしてはいけません。
- 感染したような症状があった場合、通院中の移植病院を直接受診せず、まず担当医やレシピエント移植コーディネーターに電話で相談してください。
- 感染し移植病院以外に入院することになった場合、その病院の担当医に移植後であることを告げ、移植病院の担当医に連絡をしていただくように話しをしてください。
- 移植を受けた人にもワクチン接種は推奨されています。副反応の危険性が全くないわけではありませんが、ぜひ受けてください。
この記事は役に立ちましたか?
わかりやすかった
あまりよくわからなかった
わかりにくかった