臓器移植Q&A

肝臓肝臓

拒絶反応、感染症、合併症

拒絶反応とは何ですか?また、肝移植後に起きる合併症にはどのようなものがありますか?

拒絶反応とは、自己ではないと認識されたものを排除しようとする免疫機能による生体反応です。肝移植の場合、他人(ドナー)から移植された肝臓を自己(レシピエント)の免疫細胞が排除しようとする反応を指すことがほとんどです。制御できない場合、移植された肝臓の機能は徐々に失われてしまいます。また、肝移植では、稀ですが、逆に、移植された肝臓に含まれるドナーの免疫細胞がレシピエントの体を攻撃するものもあります。拒絶反応を制御するため、前述の免疫抑制薬の内服が必要なのです。

肝移植後に起きる合併症は大きく分けて、肝移植の手術に関するもの、免疫抑制薬に関連するもの、そして肝移植が必要となった、もともとの病気の再発に関連するものがあげられます。

肝移植の手術に関連するものでは、血管のトラブル(出血や目詰まり等)、消化管のトラブル(胆汁の漏れや、消化管の穿孔等)、創部のトラブル(痛み、感染等)などの他、移植した臓器が原因不明のまま機能しないことなどがあります。

免疫抑制薬に関連するものとしては、免疫の制御(抑制)が効果的でない場合の拒絶反応(上述)、また反対に、免疫の抑制が効果的であるがゆえに本来の生体の防御が弱まることによるさまざまな感染症の発生のリスクの上昇、そして、免疫抑制薬の副作用として生じてくる神経障害、腎機能障害、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症等があげられます。

もともとの病気の再発を合併症とするかは受け止め方が分かれるところかもしれません。胆汁の通り道の障害が多発する病気や、原因のはっきりしない重症の肝炎、そしてある程度進行したがんなどは、肝移植をして、ただちに安心というわけではありませんので、あげさせていただきました。
多くの合併症の可能性があり、驚いた方もいらっしゃるかもしれません。

お示ししたもの以外にも、稀な血液系の病気が発生したり、がんのリスクが上昇したりすることが知られています。とても怖いと思う人もいらっしゃるでしょう。しかし、肝移植は救命のための手段です。いったん移植を受けて命を取り留めた後には、ここで記した合併症を避けたり、発生した場合は治したり、治癒せずともうまく付き合っていったりするために、移植医療チームは全力で立ち向かいます。幸い、移植医療の黎明期から現在まで、多くの経験が積まれ、多くの合併症は克服できるか制御できるようになってきています。
遠慮せずに、不安に思うことは、どんどん移植医療チームに聞いていきましょう。

執筆:赤松 延久・田村 純人

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